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SNOW ROSE
乙女の章
W.Sarabande
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ゲオルク神父はそう言うと椅子から立ち上がり、リュートを抱えて戻ってきた。
 ヴェルナー神父はオーボエ・ダ・モーレでマッテゾン神父はトラヴェルソ、シスター・ミュライがヴァイオリンを持ってきていた。
 何とも不思議な組み合わせであろう。
 オーボエ・ダ・モーレは“愛のオーボエ”と言う意味の木管楽器である。甘い音色のオーボエ属の楽器なのだが…それをヴェルナー神父が奏するとは、何とも以外と言えた。
「皆、宜しいかな?それでは始めるかのぅ。」
 ゲオルク神父がそう言って合図を出すと、礼拝堂内に音が響き始めた。
 第一楽章アンダンテ。ゆったりとした響きが心地好く、春の昼下がりを連想させる。
- 聖グロリアは陽射しの中に神の慈しみを感じ、その中へ神の御心を見た。 -
 楽譜の片隅にそう書かれており、この楽章の意味を表しているようであった。続く楽章いずれにも、こうした書き込みがある。
 第二楽章アレグロ。ここではトラヴェルソとヴァイオリンがほぼ休止し、オーボエ・ダ・モーレと通奏低音に比重がかかる。
 曲調は短調へと移行し、不安感をつのらせる曲となるのである。
- 民よ、何故に裏切るや?神はすぐ傍におわすと言うのに。あぁ、人よ、憤ることなかれ。 -
 第三楽章アダージォ。再び明るい調性が戻り、その主題はまるで水面の波紋のごとく、幾重にも広がってゆく。
 この主題は、古き讃美歌に由来するもので、まるで神からの愛が心に染み込むようであった。
- すべての人々よ、原初の神を讃えよ。我らを愛する神を讃え奉れ! -
 終楽章フーガ・ヴィヴァーチェ。調性はそのままに、快活に走り回る主題はまるで、愉しく遊び回る無垢な子供たちを思い立たせる。
- いつの日か、我ら汝の子として傍らにあらん。我ら喜びて舞い上がれり。 -
 この様に、各楽章に記載された言葉から“グロリア・ソナタ”の別名で知られているのであった。
 さて、この五人の演奏は…ひどいものであった。
「これでは…神に捧げることも儘なりませんな。我らも練習をせねば…。」
 苦笑いをしながら、ヴェルナー神父が言った。
「そうですね。ここまで腕が鈍っていようとは…正直思いませんでした。」
 方を落として、隣に立っていたマッテゾン神父もため息混じりに言ったのであった。
 因みに、一つも間違えることなく奏したのは、シュカただ一人であったのである。
 ゲオルク神父もシスター・ミュライも、互いに苦笑いしている有り様であった。
「あらあら、今度はシュカに教えを乞わないとならないわねぇ。」
 さも可笑しげにシスター・ミュライが言うと、神父三人は一斉に笑いあったのであった。
「確かにのぅ。それでは月に一度、神に音楽の捧げ物をしようではないか。この教会の者全てでのぅ。」
 このゲオルク神父の発案に、二人
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