乙女の章
U.Allemande
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・アルテは乙女ラノンの、シスター・ミュライはシュカの教育係を兼ねている。
だが、もう一つ役割が与えられていたのである。
それは“監視役”であった。
それと言うのも、ここは隔離された一種の世界であり、乙女達を汚れた世俗的世界へ入らぬよう監視していたのであった。
それが神の求めるものであると、この時代にはそう本気で考えられていたのである。
しかし、シスターや神父の言い付けを守っているうちは、これも緩やかなものになっていた。
彼女らはその点、優秀な乙女だったと言えよう…。
暫くして、シュカとラノンは森の中へと入っていた。
「シュカ、あそこの茂みに沢山実ってるわ!」
ラノンが指差してシュカに言った。
「まぁ、なんて沢山!シスター方が喜ぶわね!」
シュカは嬉しそうにそう言うと、ラノンと二人で駆けて行き、あれこれと語らいながら木苺を摘み始めた。
カゴは見る間に一杯となり、二人は満足げに微笑んだ。
「来て早々、こんなに沢山採れるなんて。なんて幸運なんでしょう!」
シュカは無垢な笑顔で、傍らにいたラノンに笑い掛けたのであった。
乙女達が訪れたこの森だが、気候は安定していて年中暖かい。だが、一度外へと出れば全く違い、四季の区別がはっきりとしている。
そのため人々は、この森を聖なる地と呼んでおり、森の中心へ建てられている教会に仕える者達以外、絶対に立ち入ることをしなかった。
その理由は、世俗の者が侵入すると惑わされて、この森から生きて出ることが出来なかったからと言われている。
そう言われるようになった理由は、この森で殉教した聖グロリアの話に由来しているのであった。
それは北皇暦時代の話しである。
ある年、大寒波がこの大陸を襲った。その時、一人の女性が自らの食べ物さえ人々に与え、寒さをしのぐ薪を作るために家まで壊したと言う。
だが、人々はそんな女性の親切を嘲笑うかのように、奪い去るようにして全てを持っていってしまった。
女性は既に弱り果てており、そんな彼女を救ってくれる者など一人も居なかったという。
その女性は寒さをしのぐために、深い森の中へと足を踏み入れていた。何も食べる物もなく、女性は痩せ細っていたのだった。
しかし、神はそんな女性をお見捨てにはならなかったのである。
神はその森に祝福をお与えになり、善き食物をその女性に与えた。
暫くして女性は元気を取り戻し、神の慈悲に深く感謝を捧げるべく、中心にあった泉のほとりに天幕を張り、神に祈りを捧げ続けたと言われている。
これが聖グロリア教会の始まりとされ、この森が聖地と呼ばれるようになった由縁である。
しかしその後、この女性は森へと進入してきた町人達に殺され、傍の泉へと投げ込まれてしまったのだとも伝えられている。
そ
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