乙女の章
U.Allemande
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数年の後、シュカはすっかり教会の生活にも慣れていた。とは言っても、決して両親のことを忘れたと言うわけではない。
心細さに涙で枕を濡らすことは少なくなってはいたが、やはり思い出すと恋しくなるのは仕方のないことであった。
「シュカ、森へ木苺を摘みに行きましょうよ。天気も良いし、神父様にも許可を頂いてきたわ。」
窓から外の景色を眺めていたシュカのところへ、もう一人の乙女であるラノンがやって来た。
シュカは彼女の言葉に応じて窓から離れ、ラノンの傍らに歩み寄って言った。
「今頃は沢山実ってるんじゃないかしら?大きなカゴを借りて行きましょう!」
シュカがそう言うと、ラノンも「そうね!」と返答し、二人は揃って食堂へと向かった。
食堂の奥に厨房があり、そこに入るとシスター・アルテがいた。どうやら今日の食事係はシスター・アルテのようである。
「あらあら、二人揃ってお出掛けですか?」
シスター・アルテは微笑んで聞いてきたので、二人は「はい。」と返事を返した。
それからラノンは、シスター・アルテに大きめのカゴを貸してほしいと頼んだのであった。
「木苺を摘みに行かれるのですか?では、それに期待して、タルト生地を作っておきましょうね。お二人とも頼みましたよ?」
シスター・アルテはそう言って、厨房の奥から大きなカゴを持ってきてくれた。それも二つ。
そのカゴの一つに、シスター・アルテは何かを詰め始めた。
「お腹が空くと思いますから、軽食と飲み物を入れておきましたからね。」
恐らく、昼食に作ったマフィンであろうが、これは嬉しい心配りであった。
「ありがとう、シスター・アルテ!」
シスター・アルテはニコニコしている。実はこのシスター・アルテ、木苺が大の好物なのであった。
さて、二人は互いにカゴを持って裏庭に出ると、そこにはシスター・ミュライの姿があった。洗濯物を干しているようである。
「シスター・ミュライ!私達、これから森へ木苺を採りに出掛けてくるわ。」
シュカがそうシスター・ミュライに告げると、シスター・ミュライは手を休めて二人を振り返って言った。
「あら、それは楽しそうですね。沢山採れたらジャムも作りましょうね。なにか軽食はお持ちになりましたか?」
「ええ、シスター・アルテが持たせてくれたわ。」
シスター・ミュライに聞かれたため、ラノンはカゴを持ち上げニコリと笑って返答した。
それを聞いたシスター・ミュライも微笑んで言った。
「では気を付けて行ってらっしゃい。あまり遅くなると、神父様方も心配しますからね?」
「分かってます!夕方になる前には戻りますから。」
シュカがそう言って手を振ると、シスター・ミュライも可笑しそうに笑って手を振り返したのであった。
ここで出てきた二人のシスターだが、シスター
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