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SNOW ROSE
乙女の章
T.Praeludium
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は無いものだとも思っていた。
 そのステンドグラスを見ているシュカを残し、先へとシスターは進んで聖堂の横にある扉の前へと来ていた。
 シスターは「シュカ、こちらへ。」と言って、いつまでもステンドグラスを見つめるシュカに来るよう促した。
 シュカはその声にハッとして直ぐにシスターの元へ行き、開かれた扉の中へと入ったのであった。
 中に入ると、そこには神父と思しき男性が三人、シスターと思われる女性が一人と、シュカより一回りほど歳が上の女の子が一人、テーブルを囲む様に椅子へと座っていた。
「よく来られた、神の乙女よ。さぁ、お座りなさい。」
 そう言ったのは、年老いた神父であった。そうはいっても、ここにいる三人の男性は、シュカから見ればかなりの高齢だ。その中でも老いている、と言う意味ではあるのだが。
 シュカは言われた通りに席に着くと、周囲の者達は次々に自己紹介を始めた。
 シュカはそのようなことなどお構い無しに、気になっていたのは目の前の料理であった。
 育ち盛りのシュカにとっては、あまりご馳走とは言い難かったが、それを埋め合わせるような甘い香りが漂っていたのである。
 その甘く鼻を擽る香りがどこからくるのか、シュカは辺りを目で見回してみた。
 そんな時、丁度自己紹介も終わったようで、シスターが小声でシュカに呟いた。
「何を食べても構わないけど、ちゃんとお祈りしないとね。」
 そのシスターの言葉に、シュカは真っ赤になってしまったのであった。
 これらがシュカがこの教会に住まうことになった第一日目の記憶である。
 但し、この夜の席に同席出来なかった一人の乙女については、誰も語ることはなかったのである。
 シュカが到着する日の朝、その乙女は神への捧げ物としてリヒトの泉へと、深く深く…その身を沈めて逝ったからである。
 シュカがその事実を知ることになるのは、その後七年経ってから。同席していたもう一人の乙女、ラノンが泉の中へとその姿を消し去る時なのである…。




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