105部分:それぞれの思惑その八
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それぞれの思惑その八
一方解放軍の主力十五万はそのまま南下を続けレンスター〜アルスター間の中間部分で停止し陣を組みだした。その陣は異様なものだった。ファルコンナイトとドラゴンマスター等の飛兵、パラディン、フォレストナイトといった剣を用いる騎士とデュークナイト以外の弓や槍、魔法を使う騎士は馬から降りそれぞれ歩兵や弓兵、魔道師達に加わり中央部において散兵編成で配された。歩兵達は剣や斧を装備し弓兵や魔道師達と混じり比較的小単位ずつで布陣されている。方陣を得意とするフリージとは全く異なった布陣である。
左右には剣や斧を手にする騎士団が置かれた。主立った将達は全て前線で指揮を執り中央部のすぐ後ろには僧侶達が控えている。セリスは中央とそう兵団の間に本陣を置きオイフェ、シャナン、レヴィン等がいた。
「随分変わった陣だね」
セリスはオイフェの提案どおりに配された自軍を観ながら傍らに控えるオイフェに言った。
「敵の兵力を分散させてこちらの望む通りに戦う、それは解かったよ。けれどこの陣は?」
「これこそが私の策の詰めなのです」
オイフェは表情を変える事無く主君に述べた。
「これが?」
「はい。もうすぐ御覧になれますよ、我が軍の勝利を」
「オイフェ・・・・・・」
セリスは仮面の様に表情を変えないオイフェに戸惑いシャナンやレヴィンも彼をいぶかしんだ。やがてフリージ軍が現われるとの報が入った。その陣は予想通りテルシオとカラコールであった。
「これで決まりです」
彼は笑った。
「城は城壁を壊し、車はその動きを止める。それだけです」
オイフェは目の前の大軍を見ながら笑っていた。まるで全てが自分の思惑通りに進んでいるかの様に。
今将に干戈を交えんとする両軍を少しはなれた丘の上から見ている男がいた。かって帝国で司祭を務めていたサイアスである。
「中々面白い布陣ですね」
サイアスは解放軍の陣形を観ながら一人呟いた。
「ですが相手は雷神イシュタル、果たしてどうなるか」
風が吹き赤い髪がたなびく。
「セリス皇子、貴方が新しい時代を開くに足るか、見せてもらいます」
ここに『レンスター〜アルスターの戦い』と呼ばれる戦いの巻くが開いた。後世の歴史家達はこの戦いを指して『歴史の転換点』と称した。それをこの時誰も知らなかった。
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