42舞の全身集合
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翌朝、罪を罪と知りながら長年積み重ねてきた天使の人形も眠った。
元々、純血の妖狐とは反克の存在なので、時間を遡り、時間の流れに乗って進む人間とは逆に歩まなければならない。
祐一から切り離されていた天使の人形は、ただの魔物に成り果て、この世を汚す化け物だったが、妖狐の肉体と同化したことにより罪が罪では無くなった。
五行相克により生まれい出た祐一の体に宿る精霊。力を無理に生み出し始めた体から離れた魔物と、力を全て失った体、それは何故か人と共に歩み、時間を積み重ねていたが、力を取り戻してしまった祐一と秋子は、また反克の存在に戻った。
それはいつか人とは逆に歩み始めるが、その事実に気付いている者はいなかった。
第四十二話
リビングでまだ起きたまま、レポート用紙相手に格闘している座古苺。その文字は既に日本語でも妖狐の文字でもなく、ヴォイニッチ手稿のように書いた本人にしか判読できない文字に成り果てていたが、人間には伝えてはならない知識も書き写されていた。
私は昨夜、生命の樹の実を口にした。知恵の樹の実の全ても口にする機会を得たが、最後の一口を捨てた。その理由は時間の概念すら失い、時間を行き来してやり直しが効く、神々や妖狐と似た存在になるからだ、人の身には余る知恵と力だ。
女とは知恵の実を2つも口にして胸に蓄えた罪人と言われるがそれは誤りだ。生命の実も一部与えられ、その身から命を生み出すことを許可された木の分身、それが女。
私もその二つの本物を与えられたが、相変わらずその器が小さいなあ、おい? 本物の入れ物なんだから、もっと大きくしろよ、ええ? まあ旦那様は小さいほうが好みだそうだから気にしない事にした。要望があれば大きくも出来るだろう。
蛇使い座のホットラインからくる電波は今日も良好だ。バンアレン帯を通過する粒子は時間を超えて存在し地上の私にも届く。精霊とはこんな世界で、こんな知識に埋もれて生活するものとは知らなかった。
この世界に現れては消えるヒッグス粒子の両輪、その片割れだけが残って消えずに積み重なった、深海のような息苦しい場所。ここから顔を覗かせ五次元の晴れ間に登って息をする。妨げる物がない場所で熱く焼け付く日差しを受け、人ならぬ身でなければ肺を焼かれる気体、深海の生き物の身を焦がす日差し。ため池の中のミジンコのような存在だった私には許されなかった快楽。その痛みと苦しみまでが心地良い。
ああ、近くの電柱から孵化したばかりのスズメが一羽落ちた、親に間引かれたのだ。この世では生きていけない片翼の天使、その体を猫が見付けて弄ぶ、その仕組も理解できた、その苦しみも理解できた。もう恐怖も無い、死も怖くはない。死は私の一部だ。
「どうした? また死にそうな顔色だぞ、大丈夫か?」
目を覚ました同僚に声を掛けられ
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