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KANON 終わらない悪夢
42舞の全身集合
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後、強引に父親に引き離されたが、自分の命をも捨てて娘を救った対価すら支払わず逃げた川澄の者に怒り、妖狐の姉妹によって災厄が起こされ、倉田家によって捕らえられて妖狐の前に引き出されたあの日。
 舞の父である妖狐とは今生の別れをしてから解き放たれ、妖狐の一族から監視下に置かれ、「災厄の忌み子」である舞と、災厄を起こした当事者として扱われて来た舞の母。
その母にとっては「心も体も魂まで呼び合う運命の人」が今も生きていると聞かされて驚く。
『私、この子と結婚するね、佐祐理も一緒に結婚する』
「はぁ?」
 いつも通り理解不能の単語を連ねる娘だが、今日のはとびきり狂っていて、実の弟と結婚して、女の親友とも結婚すると言い出した。
「そんな、だめなんだよ、姉弟では結婚なんかできないんだよ。それに女同士なんて……」
『いいの、今の私はイザナミに選ばれた。天孫降臨の巫女だから、姉弟で結ばれないといけない。でも妹の名雪じゃ無かった、国産みの神話じゃなくて、滅びの巫女、終わりの始まりの娘』
「ああ、舞が何を言ってるのか分からないわ、イザナミ? 滅び?」
 心の声で命令されても、只人である母には何一つ理解できなかった。二十年前に聞かされた、自分達を捕らえた妖狐の一族と妖狐の会話、あの日と同じように母には何一つ話の内容を理解できなかった。
『いいのよ、お母さんは気にしないでいい。ただ、私は忌み子じゃなくなった。お母さんも、あの時殺されたお爺さんも災厄の根源じゃない、この可能性を残すために私は産まれた。人の世を終わらせるために遣わされた滅びの巫女。だからもう泣かなくていいの、罪を償うためにあくせく働いて、苦しい思いをしなくてもいいの。分かれてた私も祐一と佐祐理が一つに集めてくれた、こうやってまたお母さんを治してあげられる』
 舞の体が光り、その光は母にも伝わった。十年以上前に行われた復活の儀式、あれと同じ行為が、魔法が再現され、母の痛みと苦しみが取り除かれて行った。
『お母さんの恋人にもいつか逢わせてあげる。私のお父さん、まだ見たこともない人だけど、きっと今もお母さんのことが大好き。だから眠って』
 あの恋人と再会する時も「日々の生活に疲れ切った、ノーメイクで皺だらけのお婆さん」ではなく、若々しい頃と同じ張りのある肌で、白髪など無い頃の姿に戻された。
『これから起こる酷い未来を見たくなければ、目を閉じていればいい、心も閉じていればいい。イザナミの母なら神域にもきっと行ける、天の岩戸の向こうなら、この世の終わりを見ないでも済む』
 長年の痛みを取り除かれた舞の母は娘の腕の中で眠った。自分の目の前で妖狐の一族や復讐者、債権者に惨殺された父、その断末魔の悔恨の叫びや慟哭も、運命の相手に聞かされた今生の別れも、人に望まれず生まれてしまった忌み子である娘も、全ては間
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