41天使の人形の記憶
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い。お婆さんは美汐を抱き締めて、その穴から流れる血を止めようとした。
「この子の記憶は封じてしまうのが一番でしょう、良い思い出だけを残して、友達は故郷に帰った、そう書き換えてあげます」
「いやあっ、ゆうくんをかえしてっ」
秋子への呪いと怒り、祖母への怒り、天使の人形に対する怒り、美汐は自分自身が穢れと災厄になろうとしていた。
「やめるのじゃ美汐、この方に怒りを向けてはならんっ」
「いやあっ」
美汐が壊れきってしまう前に、秋子の力で昏倒させられ、祖母の胸に抱かれて眠らされた。
「数日猶予を与えます、天野の家で記憶を消すか、出来なければ私の所に連れて来なさい。貴方のように生きながら死人として暮らすよりは良いでしょう。では後日」
自分の義姉や、その夫、息子、自分のコピーを見て、人間の心を学習していた秋子も人の心を理解し始め、美汐と祖母にも罰ではなく温情を与えて去った。
「ゆ、う…… く、ん」
ほんの一月の出会いと別れ、その幸せには対価が求められたが、取り戻すにはもっと大きな対価が必要とされた。
少女の怨念にも似た妄執は、天野の忘却の術すら破り、舞と同じく長い苦しみと血と汗と涙を積み上げたが、七年の歳月を掛けて天の理をも覆して奪い返した。
こうして大半の少女が命を失うはずの、長い一日が終わった。天の理を書き換え、物理法則を捻じ曲げ、命を繋がれた者も、命を永らえた者も、命のロウソクを他人から盗み出して与えられた者も、五行相克に反して罪人となった者達が、墓から這いずり出て人の世を歩む異常な事態に陥った。
ここまでの罪を世界に許容させるには、逆に生者を墓に入れ、この世を冥界としてしまう以外に無い。
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