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KANON 終わらない悪夢
41天使の人形の記憶
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、隣りにいる祐一の使い魔は、既に力を使い果たし、天野家の秘薬や術だけで持っている存在で、本体はこの地から連れ去られ、名雪にリンクを断たれて帰る場所もない。
「高砂や、この浦舟に帆を上げて。この浦舟に帆を上げて、月もろともに出で汐の」
 お婆さんにより高砂が歌われ、仮祝言が行われ、堅めの盃も交わされて夫婦となった二人。
「もうこれで別れはせん、二世を誓い合ったお前達ならまた逢える。もう離れ離れにはならぬ」
「でもっ、もう、ゆうくんはっ」
 その口に指を当ててやり、取り乱す美汐を黙らせるお婆さん。
「わしも爺様とは、こうやって祝言を上げて二世を誓い合った。人の世の人生などあっという間、わしにももうじき爺様が迎えに来て下さる、ほんのすこしの辛抱じゃ」
「そんな、何十年も待てないよ、あたしもいっしょに行く」
「滅多な事を言うものではない、お前の想い人を気持ちよく見送って、子を産んで帰りを待つ、それが女の勤めじゃ」
「あたし、子供なんか産めないっ、もうお別れで会えないっ」
 何を言っても聞き入れない美汐に手を焼いていると、来客があった。家族には仮祝言も反対されていたので、誰も入れないようにしていたが、平然と跨いで入って来た人物、それは?
「あ、秋子様……」
 こんな何もない家に純血の妖狐、それも数年前に災厄を撒き散らした恐怖の存在が訪ねて来るなど、祝言をぶち壊しに来たか、妖狐の子を連れ去って、口封じにこの家の人間の命を奪いに来た以外に考えられない。お婆さんは衣装を捨て、孫の体だけでも抱いて逃げ出そうとした。
『逃げなくてもいいんですよ、今日はお祝いに来たんですから』
 荒ぶる神々の一柱が降り立ち、その言葉だけで体を固められ、逃げようとしたことすら忘れさせられる。
「あきこさん……」
「祐一君、迎えに来たのよ」
 この使い魔が消え、祐一の指が一本腐り落ちる前に迎えに来た秋子。天使の人形を名乗る使い魔も来るのは分かっていたが、ここに入れそうに無いので自分も来て、道を開いてやり、名雪の体にでも宿らせて命を繋ごうとしていた。
「いやっ、ゆうくんを連れて行かないでっ!」
 秋子を見て、死神か何かと思った美汐は、祐一にしがみついて離そうとしなかった。
「いいのじゃ、美汐。この方は狐様、丘から降りて来られた神様じゃ、婿殿を迎えに来られたのだから安心せい」
「いやあっ!」
 取り乱す美汐を無視して、土産の品を差し出す秋子。
「簡単ですが結納の品です、いつか祐一くんが見付かって帰って来た時、この約束を果たしましょう。この子はお孫さんですか?」
「左様です、天野の三世代目、わしの夫が丘から降りて来られた狐様でした」
 歯向かう事など許されず、ただ聞かれたことにだけ応えるお婆さん。恐ろしい妖狐が何故丁寧な語り口調なのか分からず恐れたが、悪意
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