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KANON 終わらない悪夢
41天使の人形の記憶
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しくお願いします」
 いつか佐祐理との縁組を貰い、孫として一弥を返してもらう内諾を得て帰る母。純血の妖狐との口約束なので、いつでも反故にされるが、親身を込めて秋子のために働けば、その謝礼として幸福や幸運が得られる。
 この災厄も妖狐への朝貢を絶ち、古い盟約を忘れて反旗を翻した自分達の落ち度。そう考えて耐え、唇を噛んで退出した。

 それから約2年、一弥の「また来るよ」の言葉だけを頼りに待ち続けた佐祐理。
「一弥、お姉ちゃん、もう待てないよ… 迎えに来てね」
 秋子の声や母親の命令により力も封じられ、一弥のように消耗して消える事は無かったが、自分自身を癒す歌声も途絶え、生きる力は失っていた。
 そして迎えを待ちきれずに、手首に消えない傷を残す事になった。

 あゆと名雪の夢の中で。
(お姉ちゃんが死ぬよ)
「どうしたの? 一弥クン」
「え? だれがしぬの?」
 一弥の言葉に驚く、あゆと名雪。天使の人形も予想外の事態を察知し、夜間の根城である名雪の体から出て行こうとした。
(行くぞっ、一緒に来い)
「うんっ」
 水瀬家から倉田家までは、飛べばほんの数十秒。幸い佐祐理は大事には至らなかった。
「かずや〜」
 幽体離脱したまま、自分の体の上を漂っている佐祐理。 
「このひと、かずやくんのおねえさん?」
「うん」
 哀れな佐祐理を見て、同情する名雪の使い魔。
「じゃあ、もうかなしまないですむようにしてあげるね」
「え?」
 名雪の使い魔は、祐一を癒し、記憶を封じた時のように、佐祐理の霊体を抱き締めて、耳元でそっと呟いた。
「さゆりさん、かずやくんは、わたしたちといっしょにいますから、だいじょうぶです。 もし会いたくなったら、ゆめの中にあそびにきてね」
「そうなんですか?」
「みんなといっしょにいるから」
『ふぁいとっ、だよ』
「はい……」
 こうして佐祐理の悲しみの感情は封じられ、天使の人形と同じように、いつでも笑う事しかできない少女に変えてしまった。
(お姉ちゃん、僕、外に出たら消えちゃうから、またね)
「ええ、きっと会いましょう… 約束よ」
 久しぶりに弟の顔を見て、穏やかな気持ちで自分の体に戻る佐祐理。天使の人形も力を使って、か細い手首の傷を塞ぎ終わった。
「かず…… や」
 病院で目を覚まし、心地良く、暖かい涙を拭う佐祐理。夢の中で弟と出会い、再会の約束をした。それは幻ではなく、現実のように思えた。
「また、一緒に」
 覚醒と共に夢の記憶は失われて行ったが、その約束は必ず叶うような気がした。弟の傍にいた、大きな力を持つ何かによって。

 天野家、お婆さんの家。
「美汐、もう泣くでない、今日は目出度い日、新しい門出じゃ」
「だって……」
 花嫁姿で化粧までしてもらっている美汐だが
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