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KANON 終わらない悪夢
41天使の人形の記憶
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威圧していた。
「しかし先日、月宮のあゆさんが、森の中で木から落ちて大怪我をしました。そこまではご存知ですね」
「はい」
「守られていたはずの女の子を誰が呪ったのかは分かりません。その時、祐一君は使い魔を放って、佐祐理さんと私、川澄の娘、天野の家、美坂の家の「跳ぶ」子供の所まで走って、助けを呼んでしまいました。それが全ての始まりです」
「そうでしたか、その日、私は家を離れて不在でしたので、お力になれず申し訳ありません」
 一弥を失ってからは、水瀬家や丘への貢物をやめ、関係を一切断って来た倉田家。本来なら、この家の敷居を跨ぐような恥知らずな真似は出来なかったが、息子の霊を開放してもらうまで、帰る訳に行かなかった。
「いえ、佐祐理さんや運転手さんは、とてもよくして下さいました。ただ、そのお礼に祐一君が出向いてしまい、佐祐理さんの願いを叶えようとしたようです。「亡くなった弟の、一弥君と一緒にいたい」と言う願いを」 
 佐祐理の母は、このまま家捜ししてでも祐一を引きずり出し、一弥を取り返したかったが、使い魔の一つにも適わず、目の前に秋子がいる状況では、唇を噛んで耐える以外に無かった。
「自分の力も知らず、叶えられない願いを叶えようとしたのは許して下さい。悪意は無かったんです。でも祐一君と佐祐理さんには強い縁が出来ました。ここまでになれば、縁組をして許婚とする所ですが、祐一君は他の子とも強い縁が出来ています。それに何よりも、祐一君の体は、私の姉が連れ帰ってしまい、こちらからの呼び出しには応じようとしません」
「はっ?」
 使い魔を残したまま本体が消える。母にもその意味が分かったので、余りにも無責任に思えた。このままでは使い魔も、一弥の霊も、何もかも一緒に消滅してしまう。
「娘の名雪が何とか祐一君の記憶を封じ、この国、いえ、この星を破滅させるような災厄は防いでくれましたが、祐一君の使い魔と一弥君の霊は、一つに集まって月宮の娘さんの傍にいます。これは私の力ではどうしようもありません」
「ええ?」
 余りの話に、背筋に冷たい物が走る母。祐一は秋子達よりも酷い災厄を起こす力を持っていて、あの魔物達が集まって何かをしようとしている。
「体から離れてまで、何をしようとしているんですか?」
 秋子達のように、禁忌を破った人間を罰するために降りて来た妖狐を鎮め、走狗となってその者達を狩って来た倉田家。今度もそのような者がいれば、大変な災厄が起こってしまう。すでにその役目からは抜けていた倉田家だが、聞かずにはいられなかった。
「祐一君は、月宮あゆさんを助けようとしています。そして佐祐理さんの願い、一弥君の復活。力を消耗する美坂の栞さんの命を永らえる事。天野の家の三世代目、美汐さんとの再会。最後に… あゆさんを救っておきながら呪った、川澄の娘への罰です」

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