103部分:それぞれの思惑その六
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それぞれの思惑その六
「イシュ・・・・・・タル・・・・・・・・・!?」
ユリアが不意に言葉を発した。
「?ああそうかユリアは見た事無いんだ。イシュタル王女はフリージのお姫様でリンダやティニーの従姉にあたるの。『雷神』って呼ばれてる凄い魔力の持ち主なんだ」
「雷・・・・・・神・・・・・・!?」
雷神という事場にさらに反応した。糸の切れたマリオネットの様にガクン、と崩れ落ちた。
「ど、どうしたの!?」
皆驚いて駆け寄る。
明らかに様子がおかしかった。髪はかき乱れ全身が汗だくになりガタガタと震えハァハァと苦しげな息をしている。
「だ、大丈夫!?」
蒼白になりユリアを気遣う。ユリアは苦しげに言葉を発した。
「セ、セ・・・・・・リ・・・・・・ス・・・・・・さ・・・・・・ま・・・・・・・・・」
「セリス様!?」
「私を・・・・・・セリス・・・・・・様・・・・・・の・・・・・・所・・・・・・へ・・・・・・・・・」
その頃セリスは解放軍の男性陣と共に食事を摂っていた。何やら談笑しているようだ。
「それで最後その娘は疑いが解けて晴れて許婚と結ばれるんだね?」
「はい、娘は浮気なぞしておらず夢遊病で彷徨っていたのです」
セリスはヨハンの話を興味深く聞いていた。
「夢遊病か、聞いたことはあるけど実際には見た事無いなあ」
「私はありますよ」
「本当?」
スルーフがセリスに言った。
「以前アグストリアにいた時マッキリーのある街で見たのですがどうやら心配事があるとそういった病気になるようです」
「つまり心の病か・・・・・・。結構治るのに時間がかかりそうだね」
「そうですね。ですが心配事が無くなれば自然と治ります。私の時もそうでした」
「心配事、か」
その時だった。女性陣が苦しんでいるユリアを担いでセリスの前に現われたのだ。
「!?」
ユリアはラクチェとパティに担がれセリスの前に出て来た。身体は汗で濡れ乱れた薄紫の髪が纏わりつきガクガクと震えている。肩でハァハァと息をし今にも倒れそうな程だ。
「ユ、ユリア・・・・・・」
慌てて声をかける。その時だった。
「セリス・・・・・・」
ユリアが声を発した。
「え!?」
一同耳を疑った。何故ならそれはユリアの声ではなかったからだ。より包容力のある暖かい大人の女性の声だった。
「気をつけて・・・・・・。イシュタルが来るわ・・・・・・・・・」
ユリアは顔を上げた。
「何っ!?」
一同我が目を疑った。ユリアの右の瞳は変わらぬアメジストを薄めたような紫の瞳だった。しかし左の瞳は違った。
何処までも続く澄んだ空の様な美しい青の瞳がそこにあった。その瞳はセリスの瞳と全く同じ色だった。
「金銀妖瞳・・・・・・・・・」
「まさか・・・・・・」
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