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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
黒色槍騎兵 生成秘話
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なんて訊けるものか。しかし、俺の名は確実に軍内部で広まっていった。俺の望む形ではなかったが知名度が上がるのは良い事だ。良い事の筈だ……。そう思って自分を慰めるしかなかった。

他にも小さなトラブルは一杯あった。俺は彼女を常に俺の傍に置いた。誰も信用できなかった。長い戦争で軍人の質も落ちたらしい。どいつもこいつも腐っている! 脳味噌が膿んでいるに違いない。

この連中では戦闘だってまともにできんだろう。俺は戦闘が始まるのが怖かった。こんなことは初めてだった。

しかし、戦闘が始まると俺の心配は吹き飛んだ。俺の艦隊は猛然と敵に襲い掛かり敵を粉砕した。そうだ、俺が望んだ黒色槍騎兵、剛毅、果断、敵を粉砕する無双の艦隊、帝国最強の艦隊。それが此処にある!

俺は歓喜した。俺は帝国最強の艦隊を手に入れた。まだ規模は小さいがこれから大きくすればいい。帝国軍人は腐っていなかった。多少問題は有るかもしれないが、許容範囲だ。最高の気分だった。ミュッケンベルガー元帥からも褒められた。誰もが認める働きだった……。


そのまま死んでいれば良かった。そうすれば俺は幸せなままでいられた。真実を知ったときの俺の正直な気持ちだ。部下たちが奮戦したのは帝国軍人の義務感からではなかった。ヴァレンシュタインに良い所を見せよう、それだけだった。

俺が望んだ黒色槍騎兵、剛毅、果断、敵を粉砕する無双の艦隊、帝国最強の艦隊。そんなものは何処にも無かった。有ったのは、萌えっ子ヴァレンシュタインと頭のおかしな仲間たちだった。俺が言ったのではない。ディルクセンが言った言葉だ。

続けてディルクセンは俺にこう言った。
「過程はともかく閣下は間違いなく最強の艦隊を手に入れました。大事なのは結果です」

ディルクセン、つまりお前は俺にこの連中をこれからも使い続けろと言うのだな。ヴァレンシュタインを司令部に置けと。お前の本心はそれか。グレーブナー、オイゲン、お前たちも同意見か?


俺は確信した。あの女はロキの生まれ変わりだ、厄介事を持ち込む代わりに素晴らしい財宝を持ってくる。俺には部下たちの頭をおかしくしてしまったが、代わりに俺の望んだ最強の艦隊を与えた。

エーレンベルク元帥もハウプト中将もあの女がロキの生まれ変わりだと知っていたに違いない。各部署を転々としていたのもその所為だ。各部署にどんな厄介事と財宝を持ち込んだのやら。それで今度は俺に押し付けた。

いいだろう、ディルクセンの言うとおり俺が欲しいのは宇宙最強の艦隊だ。敵を粉砕する無双の艦隊、帝国最強の艦隊。それが得られるなら我慢してやる。必ず黒色槍騎兵の名を宇宙に轟かせて見せる。必ずだ。



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