40事件後
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あそび場からっ! ここからでて行けぇっ!!」
手元にあった棒を拾い、見えない魔物に向かって振り下ろす舞。
ゴスッ!
その時、舞の体と心に、心地よい痛みが走った。
ブンッ、ブンッ、ゴンッ、ガコッ、バキッ
同じように魔物達も舞の体を打ち付けた。
(フフフッ)
(ハハハッ)
誰かに心を奪われそうな時、耐えがたい苦しみから逃れたい時、一つだけ良い方法がある。それは自分に残された手で自分を殴り、刺し、切り裂く事、その相手が自分に割り込みたくなくなるよう、転げ回って苦しむまで。
ゴスッ、ゴンッ、ガコッ、ビシッ、ガスッ
醜い自分から自分の体を取り戻せない時、一つだけ良い方法がある。それは僅かに残った力で、自分の足をよろめかせ、手に握った物を落とし、探し物をいつまでも見えないようにする事、相手が自分を辞めたくなって、血の涙を流すまで。
「うわああああっ!」
(ガアアアッ!)
(ウオオオオンッ!)
(ガルルルルッ!)
(ギャアアアアッ!)
(ヒイイイイイッ!)
その日を境に舞の顔から表情が消えて感情を失い、次第に痛みも苦しみも感じなくなり、ただ魔物への怒りだけが渦巻いていた。
物理法則を捻じ曲げ、死んだ母の命を救い、名も知らぬ複数の患者の命を救わされ、金だとか名誉でその仕事を請け負ってしまった舞は、自分自身への自傷で対価を払い続ける羽目になった。
地獄から伸びた多数の腕は舞を捕らえ、離さなかった。たまに麦畑を訪れる生け贄によって対価が支払われ、舞の負担が減って行ったが、天使の人形も舞への救済を考えなかった。
そのまま死んでくれるか、あゆの事など二度と思い出さない状況なら、その呪いは届かない。
既に佐祐理の歌は途切れ、優しい歌声は終わってしまった。栞の力で跳んで逃げても舞の呪いは届く。それに体中に繋がれたチューブを抜くと、数日であゆは死ぬ。あゆを救っておきながら呪ってしまった舞は、救いのない人生を十年続けた。
あゆの事件の後、栞の元にも祐一が現れていた。
『この間はありがとう』
夜間は親と一緒にいる時間が多く、栞が一人になる時を見計らっていた祐一は、出会った時と同じ、夕闇が迫る公園で栞に話し掛けた。
「うん」
栞は、話し掛けられた少年が、誰だか分からなかったが、祐一の声で秋子に封じられていた記憶が少しだけ戻り、何か自分の力で少年を助けたのだと思えた。
『今日はお礼に来たんだ、僕にできることなら、何でもしてあげる』
「えっ?」
そう聞かれても、自分の願いは叶えられそうに無い物だった。「他の子のように元気に走って遊び回りたい」と言う願い。しかし、その切実な思いは祐一に届いた。
『うん、じゃあ少しだけど、はいっ』
両手を差し出して、舞がやったように、栞に力を分け与える祐一。それは小
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