40事件後
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け痛み、思慕の情が深いほど強く殺意が芽生えた。
「ごめん……」
「じゃあ一人で守ってるからっ、ぜったいに来てよっ、まってるからっ!」
「うん」
電話が切れると、魔物達はすぐ背後まで迫り、大きな爪と、牙と、棘で身を包み、醜い自分を切り裂こうとしていた。
「近よるなっ! 化け物っ!!」
その頃、舞が心配になった祐一の使い魔が家を出て走って行く、もちろん普通の人間に姿は見えない。
「まいちゃん、まいちゃんっ」
いつもの遊び場まで走っていると、前を歩いていた自分と同年代の少年を追い越した。
「どこに行くつもりだい?」
「えっ?」
その張り付いたような笑顔に見覚えは無かったが、血に染まった服やズボン、自分と同じ靴には十分見覚えがあった。
「これを覚えてるだろ?」
「ヒッ、しらないっ、しらないっ!」
思い出してはならない記憶を引き出されそうになり、必死に抵抗する祐一。
「この名前を思い出せ『月宮あゆ』」
「うっ、うあああっ!」
激しい痛みで、頭を抱えて座り込む祐一。
「さあ、どうした? 思い出せ」
「だいじょうぶだよっ、あゆちゃんはだいじょうぶなんだっ!」
名雪の言葉を繰り返し、あゆは大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「違うな、あゆちゃんは今でも病院で死にかけてる、お前が思い出さないから、一人で苦しんで泣いているんだ」
血に濡れた両手で捕まえられ、ヌルっとした赤黒い血の感触と、生臭い匂いが鼻を突く。
「うわああああっ!」
「さあ、一緒に来い、僕達は『あゆちゃん』のために生まれた、だからまだ目を覚まさない『あゆちゃん』の前にいないと駄目なんだ」
「でもっ、まいちゃんが、まいちゃんがっ」
一人で置き去りにしてしまった少女を思い、その手から逃れようとする祐一。
「舞は死にはしない、それどころかあいつは『あゆが治らなければいい』と思っている」
「え?」
「お前があゆちゃんとだけ遊んで、あいつと遊ばなくなるのを恐れている、だから『あゆなんか死んでしまえ』って言ってる、聞こえたな?」
「う、うわあ」
聞こえないようにして来た、舞の心の闇。
「さあ言え、お前はどこに行くんだ?」
「あ、ああ……」
「『あゆなんか死ねばいい』と呪っている舞の所か? それとも誰かが守らないと舞に呪い殺される『あゆちゃん』の所か? どっちだっ!?」
『ぼ、ぼくは、あゆちゃんのところへ行くっ! あゆちゃんのゆめの中へっ!』
魂の言葉を叫ぶと、全身が光り始めた祐一。
「そうだ、それでいい」
舞の祐一も、天使の人形に取り込まれ、こうして祐一の使い魔の三体が失われた。
「さあ、行こうか」
小さな翼を羽ばたかせ、天使の人形、あゆの祐一は病院へ戻った。
ザワザワザワザワ……
「でて行けっ! わたしたちの
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