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KANON 終わらない悪夢
40事件後
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っ」
 二人には月が日の光だった、鮮やかに照らし出される畑の中を、二人は走り、転び、笑い合い、月が傾くまで遊んだ。
「もう日がくれるね」
「うん」
「また明日もきてくれる?」
「うん」
「やくそくだよ」
「うんっ」
 次の日も、その次の日も祐一は遊びに来た、やがて舞は怒りを忘れ、壊れた心が元に戻るかに思えた。しかし、休みの終りが近付くと、祐一はこう言った。
「あの、もういえにかえるんだ」
「いえって、あのいえ?」
「ううん、もっととおいところ、ずっとみなみのほう」
「え?」
 祐一が災厄を起こし、人間達に狩られるより、ずっとこの地を離れて、何も思い出させないようにしようと考えていた祐一の母。
「もう、あえないかもしれない」
「うそ……」
「じゃあね、バイバイ、まいちゃん」
 また舞の中で何かが崩れる感じがした。

 舞は祐一の家、つまり秋子の家には近寄れなかった、祐一の母の願いと、秋子の力が、何があっても川澄の娘が近付くのを許さなかったから。
「でんわ」
 もちろん舞が、秋子の家の電話番号など知るはずも無い、しかし受話器を持ち、願いさえすれば、それは繋がる。
「もしもし、水瀬ですが」
 祐一の母親らしき人物が電話に出た。
「あの、『ゆういちくん』いますか」
「ええ…、ちょっと待ってね」
 すでに力の無い母は、電話の主が誰か分からなかった。あまつさえ術にかかり、自分の意志に反して祐一を呼びに行く。
「もしもし?」
 そして名雪の力で、一連の記憶を無くした祐一が電話に出た。
「…ゆういちくん」
「えっ?」
 会った覚えも無い少女の声、だが祐一の体はその声に答えた。
「まいちゃん、ごめん、もうかえるじかんなんだ」
「どうして?」
(うそだ、もうここには来たくないと思ってる)
 舞の心に氷で刺されたような裏切りが走った。
「休みがおわるから、がっこうへ行かないと」
「じゃあ、つぎはいつ来るの?」
「わからない、もうこれないかもしれない」
(ちがう、わたしがこわいからだ)
「どうしてっ? やくそくしたじゃないっ!」
 次第にその目と声に狂気が宿り、氷の刃は心を切り裂いた。
「ぼくもきたいけど、おかあさんがだめだって」
 ザワザワザワザワ……
 舞の周りで何かがざわめいていた。
「いやっ、ここに来てっ! わたしをみすてないでっ!」
 一度千切れた心は元には戻らない、そして自分自身を憎み、嫌い、滅ぼそうと思う心が、また表層まで浮かび上がって来た。
「まものが来るんだよっ 二人のあそびばを荒らしに来るんだよっ!」
 また見捨てられると思う悲しみ、また化け物と恐れられ、忌み嫌われる事への怒り。
「いっしょにまもろうよっ」
 それは喜びが強かったほど苦しく、楽しかった思い出の分だ
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