40事件後
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うん、もうお腹一杯、ごちそうさま』
『これからはお腹が減ったら帰って来るんですよ、外でつまみ食いしてはいけません』
『うん…』
幸い、魔物に付いていた血は、人の匂いはしなかったが、これから空腹に負けて人の命を吸い取って味を覚えてしまえば、いつか人の手で狩られてしまう。今の秋子には、祐一を守り続ける力は残っていなかった。
『お風呂に入りますか?』
『ううん、もう眠いから』
『そう…』
あれから、秋子の元にも祐一の影が現れたが、願い事を聞かれた時も、「祐一君がもっと大きくなって、力が強くなっていたら、その力を分けて」と言って、そっと体の中に帰らせていた。
あのとき確認出来た祐一の魔物は、自分の前に現れた者も含め6体。
しかし、天野の家や佐祐理の所に行った祐一は、少女達の心の寒さを感じたのか、何をしても体に帰ろうとせず、舞の祐一も、美坂の家に行った祐一も、天使の人形に吸収されてしまった。
秋子としても、それを黙って見守る他は無く、祐一の母も、使い魔が事件を起こして体が狩られる前に姿を消して、連絡をよこそうともしなかった。
影など見えなくなった母には、肉体のある祐一だけが自分の子供で、川澄の娘のように辛い思いをする前に、恐ろしい力が抜け出たのを幸いとまで思っていた。
『おやすみなさい、あきこさん…』
階段を這って上がり、以前自分に割り当てられていた部屋のドアを擦り抜け、祐一のために敷かれたままの布団の上に倒れ、闇の中に消えて行く魔物。
『おやすみなさい、祐一君…』
それを見送る秋子だが、この祐一は長くは持たない。力を使い果たす前に体に戻らなければ消滅する。その前に、あゆの夢の中に住む、天使の人形が吸収しに来るのは間違いなかったが。
数日後、少し回復した祐一の使い魔は、いつも通り暗闇から湧き上がり、倉田家まで這っていると、自分と同年代の少年に出会った。
「どこへ行くつもりだい?」
「えっ?」
その張り付いたような笑顔に見覚えは無かったが、血に染まった服やズボン、自分の靴には見覚えがあった。
「これを覚えてるだろ?」
「しらない」
思い出してはいけない記憶を引き出されそうになるが、無視する。
「もう自分でも分かってるだろ? 君はもうすぐ消える。 天野の家に行った僕も消えた、その前に回収したけどね」
「でも、お姉ちゃんが待ってるから」
一弥の顔が口を開き、天使の人形を睨む。
「君は一弥と同化したのか、それで長持ちしてるんだね」
「しらない」
「じゃあ、この名前を思い出せ『月宮あゆ』」
「うっ、ううっ!」
激しい痛みで、頭のような場所を抱えて暴れる魔物。
「さあ、どうした? 思い出せ」
「だいじょうぶだ、あゆちゃんはだいじょうぶなんだっ」
名雪の言葉を繰り返し、あゆは大丈夫だと
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