40事件後
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どうなさいましたっ」
そこで大きな音に気付いた使用人達が現れた。棒を持っている者もいる。
『入ってはいけませんっ、これを刺激すれば家が終わりますっ』
これ以上祐一を刺激すれば、家が壊れるのではなく倉田家が終わる。母は心の声で命令し、使用人を近付けさせなかった。
「一弥、おとなしくして」
巨大化した使い魔を怖れもせず、手を取って愛おしそうに頬擦りする佐祐理。その歌声が届くと、祐一の怒りも収まり、次第に元の大きさに戻って行った。
『ごめんなさい、お姉ちゃんのベッド壊しちゃって』
「いいの、でも、もうこんな事しちゃだめよ」
『うん』
佐祐理の腕の中で、小さくなって謝っている魔物。それはもう人の姿を保てなかったが、佐祐理には見えないのか、気にならないのか、大切そうに抱き締めて、頭のような場所を撫でていた。
『でも、何だか疲れちゃった、今日はもう帰るね』
「ええ、また来てくれる?」
『うんっ』
体を引きずって窓から出て行こうとする魔物。そこで、背中に現れた一弥の顔が口を開いた。
『また、来るよ』
「ひっ!」
母には、魔物に取り込まれた息子が見えた。まだ僅かだが、実体として作られ始めている、体の一部が見えてしまった。
「返してっ、一弥を返してっ!」
自分の息子が、不完全な形で復活させられるのを恐れた母は、魔物にすがり付こうとした。
『来るな。 絶対に返す、お姉ちゃんのために帰って来る』
しかし、心の声で命令され、それ以上は近付く事も出来なかった。ほんの一瞬とは言え、純血の妖狐の力で命令された母は、二度と佐祐理を叩く事はできなくなり、一弥が帰って来るまで黙って待つしかなかった。
やがて、力を求めるように水瀬家に辿り着いた魔物。この場所なら秋子や名雪の力が充満し、眠るだけでも力の補充ができていた。
『お帰りなさい、祐一君』
すでに人の形をしていない祐一を、秋子は笑顔で迎えた。
『ただいま、あきこさん』
魔物も、今は一弥ではなく、祐一として秋子に答える。
『お腹がすいたでしょ? 何か作ってあげますね、手を洗ってらっしゃい』
『うん』
すでに手と呼べる場所は無かったが、洗面台に行き、何かを掴み、切り裂く場所を洗う。帰り道、空腹に耐えかねたのか、吼えかける犬を切り裂いたのか、その両手は血に濡れていた。
『はい、どうぞ』
ご飯や肉類、滋養が付きそうな物も並べて行ったが、魔物は迷わずジャムを取った。
(やっぱり)
今までは一弥の体を作るため、他の物も食べていたが、魔物は既に自分の体を維持するのも困難だった。
秋子の体が欲する成分を含んだジャム、人の口では毒物としか感じられない物を、美味そうに一瓶丸ごと飲み込み、魔物は満足そうにしていた。
『まだありますよ、おかわりどうですか?』
『
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