40事件後
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つくでしょ、しんぞうの音が「とくん、とくん」って聞こえるでしょ」
「……うん」
「わたしもかなしいとき、お母さんにこうしてもらうんだよ、きっと、あゆちゃんもだいじょうぶだから、ゆういちもげんき出して」
ほえほえパワーで、幼い祐一の心の傷を癒して行く名雪。
「だいじょうぶ?」
「うん、『ふぁいとっ』だよ」
魔法の呪文で記憶を封印している名雪、こうして祐一の恐怖の記憶は封じられた。
ドタドタドタッ、ガチャッ!
「名雪……」
2階で強烈な力を感じた秋子と、一緒に付いて来た姉は、その力が祐一ではなく、名雪から発せられていたのを見た。
「やっぱり、名雪ちゃんも純血の妖狐だったんだね」
祐一の母は、名雪が自分達のような破滅の力を選ばず、祐一を救うため、癒しの力を選んでくれた事に感謝した。そして祐一が、この国を破滅させるような災厄を起こさなかった事にも安堵していた。
「ゆういち? もうねちゃった? あしたはいっぱい、ごはんたべるんだよ」
「……うん」
「ありがとう、名雪ちゃん」
祐一の母が名雪を抱き締め、息子を救ってくれた事に感謝する。
「うん、でもなんだか、わたしもねむくなっちゃった」
「ああ、よくお休み」
その日から名雪は長時間眠るようになった、力を使い果たして倒れる栞達とは違い、舞以上の力が有るにも関わらず、よく眠った。
追い払ってしまった恐怖と苦痛の記憶を持つ祐一の使い魔は、本体に帰れず、名雪の体に寄生して力を奪っていた。
その夜、約束を忘れなかった祐一が、舞のいた広場に現れた。本人は全てを忘れて眠っていたにも関わらず。
「来てくれたんだっ」
「うん、ごめんね、いっぱいまたせて」
何故か祐一にも、舞が待っていたのが分かった。心の声でその悲しみが伝わり、深い絶望が見えていた。
「ううんっ、いいのっ、あそんでくれる?」
まるで幽霊のように、普通の人間には見えない二人。幻のような祐一も、遠い距離を走るより、特定の人物と繋がって意識を飛ばす方が簡単だった。但し、3年前のあゆは祐一を知らず、妖狐としての力も僅かだったので、会う事は出来なかった。
「あの子はどうしたの」
「うん、だいじょうぶなんだって、だから泣かないでいいんだって」
名雪に記憶を消され、何もかも大丈夫だと信じている祐一。
「そう」
誰もいない夜の麦畑、しかし実体の無い二人には、明るい日差しが降り注いでいた。
「なおったら、いっしょにあそべるかな?」
もしあゆが治ったら祐一はここに来なくなる、そしてあの子供は決してこの場所に入れないと知っていた舞はこう思った。
(なおらなければいい)
治療を行った術者がそう思えば、あゆは助からない、誰かがもっと大きな力で守ってやらなければ。
「ねえ、あそぼっ」
「うん
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