39座古
[6/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
も二階に駆け込んでいた。
「ゆうくん、もう寝ちゃった?」
倒れていた真琴を強引に押し除けて、ゆうくんに寄り添って寝て、愛しい少年に頬ずりをして手を回す。
「うふっ、こうするのも久しぶりね、遅くまで遊んでてお婆ちゃんに怒られたり、それに……」
心も体も結ばれて満足し、今日は抱き合って眠ろうとした美汐。そこで祐一から恐怖が湧き上がってきたのに気付いて体を起こす。
「たすけてっ、たすけてっ」
寝顔を観察していると、当時と同じ状況になって悪夢から祐一を起こすため、揺さぶったり、キスしたり、色々な方法を試す。
「どうしたの? ゆうくん起きて、大丈夫よっ、怖がらなくていいからっ」
「……みーちゃん?」
「えっ?」
天使の人形に取り込まれていた、美汐の「ゆうくん」の記憶の全てが戻された。
「また思い出したのね? ゆうくん」
祐一の心の情景から、欠けていた全てが戻り、一緒に遊んだこと、川遊びや日常の光景が見え、また涙を流す美汐。
「川であそんだのも楽しかったよ、みーちゃんもきれいだった。熱をだしてからも、いろいろしてくれてありがとう」
楽しい思い出、悲しい別れ、目の前の少年から流れ込んでくる思いが伝わり、熱い涙が止まらず、その量に比例して心が満たされる。
「うん、楽しかったね、でもお別れが辛かった、一緒に連れて行って欲しかった」
「秋子さんも迎えに来て、最後に友達が迎えに来て「またあえるよ」って言ったのに、みーちゃんが悲しんで苦しんでたから、天使の人形が名雪を使って記憶を消したんだ、ごめんよ」
「いいよ、私が後を追って死ぬのを止めてくれたんだから、いいよ」
そう言いながら、天使の人形の行為は全く責めなかったが、美汐の大切な記憶を穢して曖昧にした名雪は敵に認定された。
「あたしのゆうくんが全部帰って来たんだ」
目の前から、穏やかで、嬉しそうな表情で見つめられ、心拍数が上がる。
「うなされてる時は、いつも私が起こして「大丈夫よ」って言ってた。私がいないとずっと寝言で「助けて、助けて」って言ってたから、最初の日から、最後の日までずっとこうしてたっ」
「天野……」
辛い記憶を思い出したのか、また涙声になる美汐を見て心を動かされる。
「そんな時は、こうして抱き締めて、熱が出てからも、体が動かなくなってからも、ヒック、ずっと、ずっとこうしてたっ」
もう祐一の上に覆い被さって首に手を回し、上から熱い雫を落とし始める美汐。
「辛い思いさせちまったな」
頭を撫でてやりながら、先日の約束がこんな形で叶ったのを、以外に感じていた。
(天野が会った妖狐が俺だったなんて)
話せば楽になる、いつか話してくれ、とは言ったが、それが自分が起こした災厄とは思いもよらなかった。
「ゆうくんが悪いんじゃないよ。でも、でもっ、この
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ