39座古
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て行く。
「あゆちゃんっ!」
「まってっ、ゆういちっ」
この年代は女子の方が発育も良いはずが、どんどん祐一に置いて行かれ、ついに見えなくなった。この日から名雪は、心のどこかで「足が速くなりたい」と思うようになった。
「たすけてっ、たすけてっ」
「え?」
「ともだちが、もりのおくで、けがしたの」
「うん、いこう」
「何してんのっ、あんたはおとなしく寝てなさいっ」
しかし、声をかけた時は、すでに姿が見えなくなっていた栞。その場所には風が吹き込み、声を聞いた少年と妹はどこかに跳んでしまった。
妹の不思議な行動は度々見たが、この時祐一の声を聞いてしまった香里にも呪いが降りかかり、その望みを叶える代わりに対価が請求され、「妹の病気が治りますように」「受験が上手くいきますように」「友達も同じ学校に通えますように」願えば願うほど人生の大半を大過なく過ごし、順風満帆で暮らしたが、その度に負債が増え、使い魔と再会した時、自分の命と体と魂の全てと、女としての機能も恋心も全て相手に売り渡してでも返済するように求められた。
「ここ?」
呼びに行った時は長く走ったような気がしたが、栞の力で帰路は一瞬だった。空間を超え、自由に行き来する魔法、それを覚えた使い魔も素早く移動できるようになった。
「あゆちゃんっ!」
祐一の使い魔は木の下に倒れた少女の元に駆け寄るが、そこにはあゆを抱きかかえて泣いている祐一もいた。
「えっ?」
目の前から消えた少年を不思議に思いながらも、すぐ先にその少年と怪我をした少女を見付けた。
(あし、はやいんだ)
きっと、自分と同じような力を使ったのだと納得した栞は、一瞬消えて少年の傍に出現した。
「すごいけが、血がでてる」
「あゆちゃんっ!」
手持ちの薬では何もできずにいると、もう一度後ろから同じ声が聞こえた。
「えっ?」
振り向くと、また少年が消え、狐に摘まれているような気がしていると、自分と同年代の少女が恐ろしい速さで走って来た。
「…?」
舞も一緒に来た少年を見失ったが、視線の先で少女を抱きかかえた少年を見付けて駆け寄る。
「…その子?」
「うん」
「…たすけてあげたら、あそんでくれる?」
「うん」
「じゃあ、こっちに」
舞を縋るような目で見ながら、血にまみれたあゆを渡す祐一。すでに妖狐の力で傷は塞がり、血も止まっていたが、脳に及んだダメージまでは直せなかった。
そして服や体に流れ、地面にも落ちていた血を浄化して、時間を戻すようにして体に返す魔法は知らなかったので、あゆには血が足りなかった。
森に向かって走る黒い高級車、倉田家に仕える爺やが運転し、後部座席では侍女と佐祐理に挟まれ、祐一が泣いていた。
「しんぱいしないで下さい、すぐにびょういんまでつれて
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