精神の奥底
65 自責と自責
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斗は正体不明の悪意から逃げつつ、ポケットからBlackberryを取り出した。
すぐに連絡先の一覧からメリーを選んで発信する。
メリーならアイリスとともに行動している。
2人を置いていくわけにはいかない。
場所によってはうまく合流してこのショッピングモールを出ることができる。
もし場所が悪ければ、ひとまず人混みに身を隠すように命じ、七海を逃してから連れ出しに戻らねばならない。
メリーとアイリスの存在に気づかれていないことを願うが、もし悪意を向ける者たちがこのショッピングモールに入ってくるところから目を付けていたならば彼女たちも危険だ。
焦りを露わにしながら、耳元に響く呼び出し音に耐える。
だがメリーは出なかった。
『……お掛けになった番号をお呼びし』
「クソ!」
呼び出し音が鳴ったということは圏外の場所にいるわけでも、電源が切られたわけでもない。
サイレントモードにしているせいで気づかなかっただけだと思いたいが、最悪の想像が浮かび上がってくる。
彩斗はすぐに頭からそのイメージを振り払うが、その僅かな時間が命取りだった。
悪意の1つがすぐ側に近づいていたのだ。
それは目の前の柱の裏から飛び出してくる。
「この!!」
「ハッ!」
彩斗は一瞬だけ反応が遅れたが、七海をかばうように前に立った。
相手は殴りかかってくるが、彩斗は右手で相手の手首を弾くようにして防ぐ。
しかし続いて腰を狙うように膝蹴りが襲い掛かってくる。
「ヤッ!」
「うぉ!?」
「ヤァ!!!」
だが彩斗の反射神経には勝てなかった。
初撃を防いだ時に左に捻れた身体のまま、右足で振り上げられる膝を蹴り潰した。
そしてそのまま一歩踏み込み、左肘で顔面を貫く。
その衝撃は鼻の辺りから脳に通じ、意識を奪った。
「ふぅ…」
一瞬の出来事だったが、彩斗は脊髄反射で全ての攻撃を防ぎ、相手を御した。
直感だったが、初撃の動きから相手がValkyrieや紺碧の闇のような訓練を受けた者では無いことを察する。
どちらかと言えば、テレビでやっている格闘技を素人が真似たような動きだったのが印象的だった。
そんな相手がどれだけ冴えていようと、銃火器を振り回す者たちとの命のやり取りを繰り広げた彩斗の無意識の反射には勝てるはずがない。
「大丈夫か?」
「あっ…うん、君は?」
「僕は無傷だよ」
七海はその顛末にぽかんとした表情を見せたものの、すぐに正気を取り戻した。
一瞬のことだが、人が実際に暴力で争うのを見るというのは、なかなか慣れるものではない。
数秒前より顔色が明らかに悪くなっている。
いきなりことで吐き気を催しているのかもしれない。
しかしここに置いてたままにするわけにもいかない。
本当ならば、今倒した相手を
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