精神の奥底
65 自責と自責
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。
日記など見てどうしようというのだろうか。
それを思った瞬間、手が止まる。
「いや……何でこれを?」
幾らミヤが彩斗のことを心配する文面を書き残していようと、それはミヤが襲われて怪我をする前のものだ。
もし一緒にいたが為に悲惨な目に遭ったともなれば、それを書いたときの気持ちのままのはずがない。
もし今、目の前にミヤがいればきっと彩斗は逃げるように立ち去ってしまうだろう。
彼女の口から自分を責める言葉が出ると考えただけで、心臓が握りつぶされて、言葉にもならない何かを吐き出しながら苦しむ自分の姿が容易に想像できる。
だが同時に彼女にそれだけ依存していたのだ。
それも僅か1週間、それも放課後という短い時間だった。
来る日も来る日も、ディーラーの中で人として扱われない無機質な生活を送り、救いを外の世界に求めてみれば、毎日蔑まれて暴力を受ける日々。
ディーラーという犯罪組織の中で育ったという特異な出自故に誰にも打ち明けられずに溜め込んだものを、ミヤは受け止めてくれた。
だがその結果、最悪の結末を迎えた。
彩斗は自分を責め、これ以上、互いに関わらないことが一番の道だと悟った。
しかし自分を責めていたのは、彩斗だけではなかった。
「これ以上……君に苦しんで欲しくないから」
「え?」
決して七海も笑顔でいるまでは思っていなかったが、彩斗の想像を超える自責の念に駆られていた。
予想外のことに驚く彩斗には目も向けられず、七海は思いを語り始める。
「私が悪いのに……私が君とミヤのことを騙したせいなのに」
「君は脅されてやったんでしょ?」
「でも……」
「もし従ってなかったら、君とミヤが入れ替わってただけさ。君が従おうと従わなかろうと、結果は君かミヤのどちらかが命を落としかける。そこから変わることはきっとなかったよ」
「……」
「それより責められるべきは巻き込んでしまった僕の方だ。僕が巻き込まなければ、最初からそんな二択は生まれすらしなかった」
「私は自分の命惜しさに君とミヤを売ったの!君が巻き込んだのかもしれない。でも私が脅しに屈することが無ければ、ミヤはちゃんと警察に相談してきっと全部解決してたかもしれない」
「何でそこまで自分を責める?」
「それは……君の方でしょ…?」
七海は今朝の病院での出来事を見ていたのだ。
彩斗も見られたことは分かっていたが、そのことが七海を苦しめることになるとは夢にも思っていなかった。
そしてそれを見た七海が全てを察していたことも。
「私知らなかった。君が病院から消えてから、あんな風に……」
「君には関係無いことだよ。僕が勝手に始めたことだ」
「あいつらを殺したのも君なんでしょ?」
「……」
彩斗は首を縦にも横にも振らなかった。
ただ無言で七海か
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