精神の奥底
65 自責と自責
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「あの……沢城くん?」
七海は悔しさのあまり唇を噛む彩斗に後ろから声を掛けた。
正直、七海自身はまるで状況を飲み込めていない。
いきなり彩斗から荷物と身体をチェックされ、身に覚えがない端末が自分のポケットに入っているのが発見された。
いつもの彩斗をよく知らない七海でさえ、彩斗がいつも通りでないことは分かる。
「あのね、私、君に渡したいものが……」
「ちょっと待って……」
七海の言葉を遮り、端末のカードスロットを見た。
購入時に付属するピンが無ければ開くことはできないものの、彩斗には先程時計を修理に出した時に久鉄に渡されたリューズがある。
それを押し込むと、スロットは呆気なく飛び出した。
「メモリーカード……でも…そうか、携帯端末では認識しないフォーマットで」
スロットには彩斗の予想通りプリペイドの通信カードと海外製のメモリーカードが収められていた。
しかしメモリーカードはさっき端末の中を探したが認識していなかった。
カードそのもののフォーマットをフィーチャーフォンやスマートフォン、トランサー、PETといった携帯端末で使われるものではない形式でイニシャライズされている。
そうすることで端末に挿入した状態でも認識されることなく、隠しておくことができるのだ。
おそらくはPC用のOSを使えば開くことができる。
一般にはあまり普及していない専門的なタイプのOSで多くの人々が触ることのないものだろう。
「中身は何だ?」
恐らく最初から彼らはこれをここに隠すつもりは無かったのだろう。
この人が溢れかえるショッピングモール内で万が一にも紛失してしまった場合に偶然拾った者に中を解析されないようにする為に細工を施していたはずだ。
仮にこの端末に隠すつもりがあったとしても、それはセカンドプラン、いざという時の手段だったに違いない。
最初、彼らは通話の中で彩斗に指示を出し、このメモリーカードの場所を伝えて入手させようとしたのだろう。
だからこそ監視しながら、彩斗が指示に従った段階でそれを支持した場所に隠すつもりだったと彩斗は読んだ。
だが予想外、いや予想していたのかもしれないが、彩斗が逆探知を掛け、端末の位置を特定して追跡してきた。
そこでプランを変え、この端末そのものにデータを隠して姿をくらませた。
これでこの端末を所持していることによる逆探知からも逃れられる上、彩斗にこのメモリーカードを渡すことができる。
「あの……これなんだけど……」
「君はこの端末を誰かにポケットに入れられた。そういうこと?」
「えっ?あっ、うん」
この状況を考察していた彩斗は七海が何かを差し出したことには目もくれなかった。
彩斗は状況的に七海が嘘をついているようには感じなかったが、それが全て演技だった場合を警戒
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