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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
100部分:それぞれの思惑その三
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それぞれの思惑その三

ーコノート城ー
「トゥールハンマーを渡せ、とな・・・・・・!?」
 城中の会議室にてブルーム王は思わず席を立ち声を荒らげた。
「はい。シアルフィ軍に勝利を収めるにはトゥールハンマーが不可欠であると存じます」
 イシュタルは席に座したまま冷静に答えた。
「敵軍には、神剣バルムンク、魔剣ミストルティンという二つの神器だけでなく一騎当千の猛者達が夜空の星々の如く集っております。彼等を前にしては私も全力をもって戦わなくてはなりません」
「し、しかし・・・・・・」
 王は躊躇する。だがイシュタルは引かない。
「父上、父上は私を今回の戦いの総司令官に任じられた時軍の全権を私に委ねられると仰いました。今更何を躊躇されるのですか」
「くっ・・・・・・」
 王の顔を汗が伝う。王の顔が困惑したものから次第に憮然とした表情の無いものに変わる。
「・・・・・・解かった。トゥールハンマーをそなたに貸そう」
 王は席に着き娘に言った。
「有り難き幸せ」
「だがそれだけではあるまい?他にも考えがあるのだろう」
 イシュタルの黒水晶の様な瞳が光った。
「はい。まずシアルフィに占領されていないアルスター東部、レンスター東の森林地帯に配されている兵力を全てコノートに集結させます」
「決戦を挑むつもりだな」
「はい。そしてコノート、マンスターの屯田兵を全て徴用します」
「トラキアへの備えは?」
「我々が健在ならばトラキアも干渉して来ないでしょう。トラバント王、利に対して極めて貪欲な男であります故。その事は父上もよくご存知でしょう」
「うむ、確かに・・・・・・」
 王もその言葉に頷いた。常にトラキアの存在を忘れた事は無かった。その為にイシュトー、イシュタルを国の東西に置き各地に砦を造り屯田制を敷いたのだ。
 王は意を決した。毅然とした顔でイシュタルを見据え令を下した。
「よし、そなたの提案、全て認めよう。必ずや叛徒共を成敗するのだ」
「はっ!」
 イシュタルは席を立ち敬礼した。王も席を立ち諸将もそれに倣った。
「卿等の健闘を祈る。卿等に雷神トゥールとトード神の加護が有らん事を!」
「はっ!」
 杯を掲げる王に対し諸将がフリージの敬礼で応えた。その日の夜イシュタルは軍服に着替え街へ出た。
 夜の街には喧騒と陽気な歌声や笑い声が充ちている。イシュタルはその中を会議室での沈着な表情とは全く異なる微笑を浮かべた優しい顔で歩いていた。
 周りは誰も彼女がイシュタルだと気付かない。長く美しい銀髪を後ろで束ね上げ黒い軍服とマント、白ズボンの彼女を皆は若い女騎士だと思っていた。
 不意に道にしゃがみ込み泣いている男の子に気付いた。イシュタルは男の子に歩み寄った。
「坊や、どうしたの?」
 しゃがみ込み男の子ににこり
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