10部分:天馬と魔道師と盗賊とその一
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準備に取り掛かるべく部屋を後にした。それを見つつヨハンはひっそりと
呟いた。
「ラクチェ、出来る事なら闘いたくはないが」
深い溜息と共にヨハンは部屋を後にした。出撃してからも彼の表情は冴えなかった。
ーソファラ城ー
イザーク西部はソファラ盆地という。高い山々に囲まれた広い盆地であり丁度ガネーシャとイザークの中間にその入口がある。湖沼が多く土地は肥えているが十分に開拓されているとは言えない。人口もあまり多いとは言えない。その中で最も豊かな地域にソファラ城はあった。
城主ヨハルヴァは短気で口が悪いが豪快で気さくな人物として知られていた。そんな彼にも兄とおなじ難問が飛び込んで来た。
「反乱軍を叩けだあ?冗談じゃねえぞ」
茶の髪と瞳の荒削りな顔立ちの若者が苦々しげに言った。ソファラ城城主ヨハルヴァその人である。緑の軍服を肩に掛け白いシャツとブーツ、緑のズボンを着けている。手首には白い布を巻いている。
「しかしそうも言ってはいられませんよ。王は御自身の仰る事に従わぬ者に対しては残忍極まりない御方です」
小山の様な大男が低くドスの効いた声で言った。ダグダという。元は山賊であったがヨハルヴァの人柄に惚れ込み帰順してその部下になった。怪力で知られまた気概のある人物として有名である。濃い髭が顔を覆い、髪はバンダナで包み白っぽいズボンに濃黄色のシャツを着ている。
「それは俺と兄貴が一番良く知っている。何せ生まれた時から親父の側にいたからな」
「でしたらすぐ出撃すべきです」
茶の髪と黒い瞳の素朴な外見の大男がその外見からは思いもよらぬ小さな声で言った。白いズボンに濃茶のシャツを着ている。
「簡単に言ってくれるな、マーティ。向こうにはラドネイがいるんだぞ」
「すいません」
「いや、謝ることはねえけどよ」
「けど殿下、結局は出撃しないとどうなるか解かりませんよ」
黒いショートの髪と瞳の小柄で少年の様な外見の女の子が言った。赤がかった黄色のズボンに黄緑の上着を着ている。
「おいタニア、殿下に対してそんな言い方は無えだろ」
ダグダがタニアを叱るがタニアは反発した。
「何言ってんのよ、父ちゃん。父ちゃんだって殿下の御前で平気でガラガラと笑ったりむしゃむしゃ熊みたいに食べたりしてるじゃない」
「うっ・・・・・・」
「それに今は率直に言った方が殿下にとってもいいわ。そうでしょう、殿下」
「ああ、まあな」
「ほら、殿下もこう仰ってるわよ。解かった?」
「糞っ、本当に口の減らない奴だ」
「父ちゃんの娘だもん」
「全く・・・・・・。すいません殿下、よく躾ときますんで」
「構わねえよ、俺は体裁や奇麗事が嫌いなんだ。それよりも考えたんだがやっぱ出撃するぞ」
「え!?」
驚いた三人を前にヨハルヴァは続けた。
「ただしソファ
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