最終話「マスクドライダー」
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向けて両手を広げた。
そして、数発の銃声が放たれ、その銃弾はすべて智代が受けてしまった。
「と、智代……!?」
銃弾に倒れ、血まみれになる智代は冷たい駐車場の地面に横たわった。
「智代!?」
咄嗟に彼女を抱き起こし、必死に智代を揺さぶる。しかし、彼女の胸元は銃弾が貫き急所は免れなかった。
「と、明……也……!」
「智代! 死ぬな……死ぬんじゃない!!」
「ようやく……会えたのに、また……約束、果たせなかったな……?」
「智代……!」
「明也……」
彼女の手が震えながら明也の胸元に添えられ、涙を流した。
「もう一度、お前と……」
「もうしゃべるな! 傷に……」
「無理だ。もう……遅い」
「言うな!?」
「明也……こんな最期であったが……お前と歩んだ僅かな人生は……決して無駄じゃなかった……もう、思い残すことはない……」
「智代……」
「さよ……なら……あな、た……」
「ッ!?」
そして、智代の瞳は閉ざされ、彼女は微笑みながら静かに息を引き取った……
「智代ぉ……智代ォ!!」
再び、泣き叫んだ。ようやく記憶が戻りかけたというのに、なのに……!
「鬼守ィ……!!」
「……!!」
彼の怒りに鬼守は固まった。そして、明也は怒りに身を任せ、憎しみに我を忘れ、あの怪物の姿へと変身を遂げた。
額から触角が突き破り、衣類が破け、不気味な緑色の堅い皮膚があらわとなる。目の色は次第に赤く変色し、そして、盾に割れた顎が大きく飛来くと、頭上を見上げて大いに雄たけびを上げた。
それは、悲しみと怒り、憎しみに満ちた合われた野獣の雄たけびでもあった。
「く、来るなぁ――!!」
「ウガアァ!!」
暗い駐車場の中を、人間体に戻った明也は冷たくなった智代の抜け殻を抱き上げながら歩いた。そのとき、ふと智代の腹部から青い光が放たれ、その光から胎児とみられるシルエットが浮かび上がった……
おそらく、あの施設での夜に……
「……」
悲しみに暮れる明也の心を、唯一和らげた光景だったのかもしれない。しかし、いずれ母体である智代を失ったことで、その中に眠る胎児もいつかは死ぬ、二人で築いた愛の証のはずが、こうして脆く崩れ去ってしまったのだ。
しかし、明也はそれを見て、わずかに口元が微笑んだ。
全てを失っても、唯一存在したという証拠が目の前にうつったのだ。それは叶わなかったにせよ、二人の間に存在した「愛」は確かに存在した……
そして、明也は智代の分も強く生きていくことを誓う。このような体であっても、それでも彼は大切な人がつなげてくれたこの命を、この先も生き続けなければならない。
どれほど辛く苦しい時でも、人は前を見て立ち向かい歩み続けなければならない。それが、どんな姿の存在であろうとも……
明也は、智代を抱いたまま闇の中へ消えていった
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