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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
【第550話】
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か、楯な――いや、刀奈さん?」
「……!?!?!?」
不意をつくヒルトの呼び方――自身の真名である【刀奈】。
突然の事に驚き、心臓が早鐘を打ち、内心嬉しさに舞い上がる刀奈。
ど、どうしよう……ヒルト君に刀奈って呼ばれるのがこんなに嬉しい何て……。
だがそれと共にヒルトに自身が『さん』付けで呼ばれる寂しさも感じてしまった。
表情に陰りが落ちる――そんな変化をヒルトが逃すはずもなく……。
「……どうしました? 刀奈呼び……不味かったですか?」
「う、ううん。 い、いきなりでビックリしただけよヒルト君。 ……でも……」
刀奈は手を後ろに組み、自身の表情を見られないように僅かに伏せながら軽く右足をプラプラさせた。
言うべきか言わざるべきか……でも……。
複雑な乙女心、だがやはり彼女は気持ちが勝り、ヒルトに告げた。
「……さん、いらないから」
「え?」
「……ふ、二人っきりの時は、お姉さんと一緒に居るときは! 呼び捨てで良いわよッ!!」
感情を露にした刀奈、言ってから後悔の念が押し寄せる。
だが、ヒルトは僅かに頬を描きながら応えた。
「あ……。 わかったよ、刀奈」
「……!? ……ぅん♪」
ヒルトの言葉が、自身の名前――刀奈を今までの様に『さん』付けじゃなくなるだけで表情が弛む。
だが生徒会長として、そんな表情を見られる訳にはいかない――クルリとその場でターンをし、ヒルトから背を向けた刀奈。
それはそれでヒルト君の顔が見られない――だけど生徒会長としての威厳も――。
二十日鼠の様に思考がぐるぐる回る刀奈――ふと一瞬、昨日見たドラマのシチュエーションが過った。
後ろを振り向いた彼女に、後ろから抱き締められるという――。
触れるだけとはいえ、口付けを交わした仲だし、もしかしたら――。
そう思う刀奈だが、流石のヒルトもそこまではしなかった。
「刀奈、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫よ。 ……後ろから抱き締めてくれても良いのに……ヒルト君のバカ……」
聞こえないように呟く刀奈――だが、ヒルトの耳にその言葉が届いていた。
内心それを聞かされドキドキするヒルト――だが。
「……ぁ……」
「……こ、これで良いですか……?」
後ろから首筋に腕を回して抱き締めるヒルト、横目でチラッと見る刀奈――互いの顔の近さとヒルトに後ろから抱き締められてる今の状況にまるで借りてきた猫の様に大人しくなった。
……キス、出来ちゃう距離……。
意識する、彼との距離を、その近さを、男として、異性――ううん、恋愛対象として。
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