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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第69話 道筋
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....か

サソリは覚悟を決めて万華鏡を作り上げて美しく整った校舎を見渡した。
そして、木山にいつもの調子で言った。

「まだあの取引は生きているからな」
「っ!」

その様子を扇子を音も立てずに畳み、困惑したような表情を浮かべている婚后が曲がり角で身を隠しながら図らずも盗み聴きをしてしまった。

******

水泳部の部活でクロールの練習をしている湾内。
能力を使い身体についてくる水を操り、障壁となる水着との摩擦を最小限にしながらペースを上げていく。
常盤台に来てから毎日のように編制されている能力開発のカリキュラムをこなすことで湾内の能力は入った頃と比べても格段と上達している。

プールの端まで着くと一息入れてプールから一気に這い上がるように出るとズレた水着を直していく。
能力が使いこなせればこのようなズレも生じない。
「おつかれさま」
泡浮が湾内のタイムを記録しながら労った。
「随分上達なさいましたね」
「いえ、まだまだですわ」
水泳技能と能力の上達は本人にとってみれば喜ばしい事なのだが何処か寂しげで不満げに水泳キャップを外した。
固まっていた髪が解放されてややオールバックになっている。

「はぁ、サソリさんとどのように進展させたら宜しいですの」
恋多き乙女の悩みは尽きない。
「ら、ライバルが多そうですわね」
「こんな程度でサソリさん事に関しては負けませんわ!」
グッと拳を握りしめるが不安感が取れないのか少しだけ落ち込む。

口が達者でもなければ、悩殺出来るようなボディでもないホニャララな体型に自信を消失して足先だけで立つような体育座りをしていく。
「げ、元気を出してくださいな!まだチャンスがありますわ」
泡浮が慌て身振りで元気を出させようとしていると

「あー、ちょっと良いかしら?」
水泳部の先輩が湾内と泡浮に向かって手を振りながら近づいてきた。
手には何やら説明書のような物を持っている。
「はい?」
「......はい?」
「大丈夫?調子悪いですの?」
「いえ、大丈夫ですわ」
今にも魂が抜けてしまいそうに脱力している湾内に先輩が心配そうに覗き込んだ。
「ちょっと悩んでいまして......どうかなさいましたか?」
泡浮が簡単に説明すると先輩は少し困ったように頬を掻いて説明書を読んでいた。

「えっとね、水着のスポンサーから新作水着のプロモーションを取りたいらしいのですが、湾内さん達なら丁度良いと思いましたのに」
「水着のプロモーションですの?」
「女性だけではなく男性の方のモデルも探しているらしく、湾内さんには男性の知り合いがいるらしいですから。他のご友人を誘っても宜しいですわ」

ピクピクと湾内の耳が動くと身体を震わせながらスッと立ち上がった。

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