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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第69話 道筋
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しているな......何かあったのか?」
「いや、考え事をしていただけだ」
サソリは気取られぬように歪んだ表情で俯いた。
「?そうか......」
木山はサソリにオレンジの缶ジュースを渡すと隣に座り、脚を組んで天井にある電灯を見上げた。
同じ缶ジュースを持っている。
「レベル5昇格おめでとうと言った所か」
測定員で同行していた木山はサソリの能力値を知ったが、彼と一戦交えた事がある木山は別段驚くことはしなかった。

「......木山」
「なんだい?」
サソリの弱々しい声に軽く戸惑いながらも木山はプルトップを開けて少しだけ飲んだ。
「......お前は教え子を奪われたんだったよな?」
「?ああ」
「敵対する相手が強大だと思った時にどう感じた?オレはアイツらを護りきる自信がない......」

サソリの質問の意図は掴めそうで掴めないでいた木山は僅かに見える缶ジュースを眺めながら軽く回した。
自分の身体を顧みずに血を流しながら向かってサソリ。
不利な状況をひっくり返してきた明晰な頭脳が初めて悲鳴を上げている。

あの子達を使い捨てのモルモットにしてね
23回
あの子達の恢復手段を探るため、そして事故の究明するシミュレーションを行うために......『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の使用を申請して却下された回数だ
あんな悲劇二度と繰り返させはしない
そのためなら私は何だってする
この街の全てを敵に回しても止まる訳にはいかないんだっ!!!

約1ヶ月前にサソリに語りかけた木山の魂の叫びであり、覚悟の表れであった。
木山はカチカチとプルトップを弄りながら、少しだけ思案した。

「君と私では違うと思うが......」
「!?」
「君には頼るべき仲間が居るじゃないか......私はそんな仲間が居なかった」
「......なか......ま?」
「君は私が道を踏みはずそうとしたら、傷付きながらも全力で止めた。そして私の過ちに向き合ってくれた」

木山は続けたこの1ヶ月に起きた事を思い出すようにボサボサの髪を掻き上げる。
「私は君が圧し潰されそうなら全力で助けるし、君の為なら君の業を背負う覚悟だってある」

君だって失敗するかもしれない
道をつまずきそうなら迷わず私は助ける
自分をブレさせずに現実を直視続ける君のまっすぐな生き方が私も含めて彼女らに伝わっている

「ずっと独りだった私と違ってね。彼女らも同じだと思う」

つまずきそうなら助けたくなる
全力で君は走って良い......

サソリの眼は写輪眼になっていた。
何故か自分の眼に張り付いていた呪われた眼。

はっきりとは分からないが......『眼』をこらして見ようとすると何かが溢れてくる。

独りじゃない..
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