ターン65 鉄砲水と大蛇の深淵
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のあなた、そろそろ話す気になりましたか?もう1度聞きましょう、ここで何をしているのですか?」
水上の感覚に慣れるためパチャパチャ歩いていると、唐突に誰かの声がする。一瞬見つかったかと焦るものの、よく聞くとその声は川向うから聞こえていた。音をたてないように耳を澄ませていると、その声がさらに続く。
「ふーむ……だんまりですか。あまり感心できませんねえ。このワタクシが誰だか、わかっていらっしゃらないので?」
それに対し、小馬鹿にしたような返事が聞こえる。意外にも女性、それも明日香みたいにいかにも気が強そうなことが声だけでわかるタイプの声だった。
「ふん。知っているとも、暗黒界の術師。頭脳労働担当がこんな僻地に何の用だ」
「質問しているのはワタクシですよ?ですが、まあいいでしょう。フリード軍かその他有象無象の残党か、そんなことはどうでもよろしい。覇王様に害をなす愚か者、その罪は万死に当たります。デュエルを続けましょう、もはや万にひとつもあなたには勝ち目のないこのデュエルを、ねえ」
「くっ……!」
どうやら、川向うでデュエルが行われているらしい。深い森のせいでまるで見渡すことはできないが、その奥で小規模な爆発音や火花が何度も上がる。だがそれよりも、僕の心に残ったのは顔も見えないあの女性の言葉だった。
「暗黒界の術師……?」
暗黒界。そして覇王。そしてこの戦略的に重要とも思えない川の近くとなると、これはもう十中八九狙いは僕だ。確かに闘技場を逃げ出してからそれなりに時間が経っているとはいえ、もう覇王の手がここまで伸びていたことに背筋が凍る思いになる。僕がまだ見つかっていないのは、ほんの少しだけ運がよかったからにすぎない。
『どうやらそのようだな。どうする、マスター?私はいつでもその判断に従おう』
「どうする、って?」
聞き返しながらも、何が言いたいのかはわかっていた。敵が目と鼻の先にいるこの状況、僕に示された道はふたつにひとつ。戦うか、逃げるかだ。僕のほんのわずかな理性は、逃げたほうが賢明だとささやいていた。まさかこの近辺の悪魔があの声の主だけだなんてことあるはずない、ここはやり過ごして安全を確保する方がいい。それに、デュエルディスクを失った今の僕が出て行ってもおめおめと捕まるだけだ。あの悪魔が僕をいまだ捕まえていないのは、裏を返せばいまだ僕が見つかっていないという何よりの証明。ならば……というわけだ。
まったくもって合理的、かつわかりやすい。なにがなんでも覇王……十代のことを救い出すためなら、余分なリスクはわずかにでも少ない方がいいに決まってる。せっかく拾った命、ここで余分に危険にさらす選択はあり得ない。
とはいえ、僕の答えは決まっている。ここで今絡まれてる人を放っておいたら後々後悔するに決ま
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