ターン65 鉄砲水と大蛇の深淵
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……十分勝機があると踏んだからこそできる、覇王に対しての軽い牽制だ。
そもそも覇王は十代の別人格、どれほど変わろうとも根っこにあるのはまさしく遊城十代そのものであるはず。入学してオシリスレッド所属になって以来ずっとひとつ釜の飯を食ってきた僕だからその思考パターンはある程度予想がつくが、少なくとも十代ならあんなふざけた内容の伝言を伝えるためだけにわざわざ部下を見逃してやった時点で、こちらが喧嘩売ってることにはまず気が付くはずだ。
そしてこれは十代ではなく覇王に会って何となく感じたことなのだが、少なくとも奴はそれを笑ってスルーできるタイプではない。というよりも、癖の強い悪魔を完璧に纏め上げるためには舐められたらおしまいだとわかっているのだろう。例え侵略の最中だろうと、自分のことをコケにした僕のことを最優先で排除しようと動き出すはずだ。僕の捜索に戦力を注げばこの侵攻はストップするか、それが無理でも多少遅らせることぐらいはできるだろう。その間に、フリード軍に頑張ってもらう。
……脳裏にここで出会った人々、覇王軍の侵攻を受けて戦ったり逃げ出したり、いずれにせよその影響を受けて平和な暮らしを捨ててきた人たちの顔が蘇る。この世界に来て何があったのかは知らないが、十代は元々僕らの世界の人間だ。なら、これ以上無関係の人を巻き込んでいい道理なんてあるはずがない。このケリは僕らでつける、それがせめてもの責任だ。
「だけどその分、皆にはまた働いてもらうからね。そこだけは、本当にごめん」
『気にすることはない。半端な状態で止まるぐらいなら、これぐらい突き抜けたほうがずっと面白くなる。これは私だけの意見ではない、精霊一同の総意だ』
「……うん。ありがと」
反対されたらどうしようかと心配していたが、どうやらそれも杞憂だったらしい。やれやれと肩の力を抜いたところで、突然背後から刺すような視線とピリピリ来るほどの殺気を感じた。何かをかすかに吹くような音も聞こえばっと振り返ったその足元、つま先すれすれの位置に小ぶりな矢が突き刺さる。さらに木々の向こうから、落ち着いた調子の声が聞こえてくる。
「これ以上警告はしない、妙な真似をすれば次は当てる。両手を上に挙げ、デュエルディスクを外して地面に置け」
『言われたとおりにしておいた方がいいな。相手の油断を誘う方が後々楽でいい』
「(……だね)」
言われたとおりにホールドアップし、デュエルディスクを外してから足元に置く。それを見て、明らかに動揺した気配が森の中から伝わってきた。
「そのデュエルディスクは、我々の……!?貴様、それをどこで手に入れた!」
「えっと……」
「待て。あの男の顔、どこかで見た気がする。それにあの服装、あれは……」
どこから説明したものかと言い淀んでいる
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