ターン65 鉄砲水と大蛇の深淵
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う異常な光景が広がっていた。妙だとは思ったけど、あの場面にはそんな仕掛けがあったのか。
『あれと同じで、我々はそれぞれ固有の特色をダークシグナーに付与することができる。というよりも、蘇生の際に魂を引き上げる作業などで自然と魂がこちら寄りになりそうなってしまう、というべきか。私の与える能力は正直このご時世で役に立つようなものでもないから黙っていたのだが、まさかこんな形で役に立つとは思わなかった』
「ふむふむ。で、僕は何ができるの?」
『説明するより体感する方が早いな。ちょっと歩いてみてくれ』
「こう?」
言われたとおりに川に沿って数歩進んでみるが、別に変わったことは感じない。すぐに訂正が入った。
『いやそうじゃなくて、川の上にだ。大丈夫だ、いける』
「え、ちょ、水上……」
『ええい、まどろっこしい』
そんなやりとりだけで後ろから突き飛ばされ、咄嗟に体勢を立て直すこともできず前に出る。そのまま足が水中に突っ込み……
―――――パチン。
突っ込まなかった。恐る恐る足元を見ると、靴の裏が水面に付いた状態でそれ以上体が沈まない。
『私はシャチの地縛神……それゆえ海の、ひいては水の力を強く持つ。難しく考える必要はない、要するにあらゆる水が私に、そしてその系譜を継ぐマスターに味方するということだ。最初からそれが当然であるかのように、水上を自由に歩くことができる。それのみでなく、もはや水中すらマスターにとって枷とならない。抵抗を受けることなく自在に潜り、呼吸や会話すら可能となるだろう』
「水上歩行に水中呼吸……河童や半魚人の域だね、こりゃ」
カードの精霊世界、命を賭けたデュエル、ちょっと見ない間にわけわかんないことになっていた親友、面便り思いダークシグナーの話。ここ数日のうちに色々なことがありすぎて、なんだかもうこの程度では驚かなくなってしまった。あまりに現実感がないせいで、まだ少しピンと来ていないのかもしれない。ゆっくりと片足を持ち上げ、また降ろす。着水の衝撃により水面に波紋が走りその感覚がかすかに伝わってくるが、足場としては依然として安定したままだ。
「じゃあ、この川を下ってくる間にも」
『無意識のうちに呼吸をしていたんだろうな。でなければ酸欠だ』
水上歩行に水中呼吸。びっくり人間的能力には間違いないのだが、ついさっき例として挙げられた洗脳能力を持つ小蜘蛛とかいうオカルトと比べると、なんというか、こう。
「……確かに使い道少なそうだね、今時」
『私もそう思う。むしろよく役に立ったものだ』
しかしそう考えると、あの時川に飛び込んだのはどうも僕にできる最善手だったらしい。破れかぶれで突っ込んだだけのつもりだったのに、これは運が向いてきたと言っていいのだろうか。
「そこ
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