巻ノ七十五 秀吉の死その十一
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幸村がその話を聞いたのは夜だった、夜ということもあり。
すぐに屋敷の縁側に出て空を見た、そのうえで十勇士達に言った。
「二年後に大きな戦になるやもな」
「大きな、ですか」
「戦に」
「星を見るとな」
それがわかるというのだ。
「長い戦になりそうもないが」
「しかしですか」
「前から殿が言われている様にですか」
「戦ですか」
「それが起こりますか」
「そう出ておる、すぐに父上と兄上にお伝えしよう」
国にいる彼等にというのだ。
「文を書いてな」
「では」
「その様にしましょう」
「是非です」
「このことを」
「そうしよう、手は打つのならだ」
それならというのだ。
「全て打つべきだ」
「全てですね」
「打ちそのうえで」
「動いていく」
「そうしていきますか」
「全ては当家が生き残る為だ」
幸村は考える顔で十勇士達に答えた。
「是非な、武士として恥ずべきこと以外はな」
「全てですな」
「手を打つ」
「そうしますか」
「何もかもを」
「そうする、あと拙者が思うに」
幸村は十勇士達にまた言った。
「若し内府殿が天下人になられてもな」
「それでもですか」
「あの方はですか」
「そうじゃ、無体はされぬ」
それはないというのだ。
「お拾様にもな」
「そうですか」
「別にですか」
「そうしたことはされない」
「そうなのですか」
「そうした方ではない」
家康の人柄を見てのことだ、幸村も家康を見ていて彼の人間性をよく知っていてそれでこう言うのである。
「決してな」
「確かに、内府殿はです」
「律儀な方ですし」
「正道を歩まれる方」
「しかも無闇な血を好まれぬ方」
「ならば」
「天下人になられれば大坂じゃ」
この地だというのだ。
「大坂は望まれる」
「あの地をですか」
「お拾様のお命ではなく」
「大坂をですか」
「大坂は要地じゃ」
幸村は言った。
「都、奈良に近く海から西国の何処にも行けるな」
「はい、瀬戸内の海から」
「四国も山陽も行けます」
「九州にも行けます」
「川に海とです」
「船を使えば何処にでも」
「そしてそれ故に人もものも集まりやすい」
幸村はこのことも言った。
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