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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第六話 宣戦布告 好きなケーキはリンツァートルテ
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(ゲットー)と呼んでいるが、的を射ているだろう。誰でも繋がれれば暴れたくなる」

自分はこの世界の人間ではなく、それに相応しい世界を創る。現状を壊す。つまり、破壊(ハガル)。旧秩序が終わる日。怒りの日(ディエス・イレ)。

「まだ完全じゃないのか」

そして蓮は理解した。ラインハルトは完全ではない。現状で蓮を圧倒できる実力を持ちながら本来の数十分の幾らかに過ぎないということだ。

「慧眼だ。確かに今の私は虚構に過ぎない。私の大半は、現状私が創った私の世界に今も在る」

「どうやって、そんなことを」

「カールの秘法だよ。何も特別なことをやっているわけではない。それに必要な大掛かりな道具がいるがね。かつてはベルリン。そして今は……」

「この町か……」

「然り」

よくやった、褒めてやろう。そうやってよく出来た赤子を褒め称えるかの様に言う。そしてあざ笑うかのように嘲笑や侮蔑が混じるかのように言う。

「この町と、その住人(おれたち)が道具だと!?」

「その憤りは的外れだな。我々がいなければ、この街など生まれておらん」

呆れたように溜息をつきながらラインハルトはいい、それに蓮がますます怒りを覚える。しかしラインハルトの言葉に同時に疑問も覚える。

「……何?」

「ハウスホーファーという男がいてな。その男を利用してカールとナウヨックスがこの町を作ったのだよ。ナウヨックスの言が正しいならこの町はいたく私に相応しいらしい」

「黄金の練成(ゴルデネ・ハガラズ)。練成陣(スワスチカ)……この(シャンバラ)であるこの町はつまり都市規模の聖遺物に他ならん。それは町だけではない。この都市の総ての命も例外なく我々の糧ということだ」

「餌だと?」

「スワスチカは戦場で開く。数多の血と魂の散華。ゆえに敵という存在が必要なのだ」

つまりは蓮に選択の余地は無いということ。逃げようとも戦おうとも、ラインハルトの完全帰還は防げない。考えられる方法は一つのスワスチカで複数の敵を撃破すること。しかし、それは圧倒的なほど難しい。

「どうするね?理解に至ったなら決断のときだ。退くか進むか―――ここで私と……」

その場の空気が変わる。それを蓮は好機と見る。ずっと圧倒されていた。飲まれないようにするのがやっとだった。しかし、今こそ好機、この場の目的を果たすために博打を打つのはここしかない。

「マリィを返せ。それで試してみろよ、喰えるかどうか。万全じゃないと彼女がいる俺とは向き合えないのか?」

挑発まで加える。綱渡りどころか、彼が気まぐれに指を一本動かす程度で殺されるだろう。それでも続ける。ここで怯えや(へつら)いを見せれば、むしろ彼は期待はずれだとばかりに蓮を殺していたことだろう。ゆえに…
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