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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第六話 宣戦布告 好きなケーキはリンツァートルテ
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で蓮はそう返す。

「フム、卿の記憶に齟齬は無い。私と卿が話すのは確かに初めてだろう」

一拍間を置きそして言う。

「つまり私が覚えているのは、過去ではないのだよ」

「過去じゃないって……予知能力でも持ってるのか?」

「未来を予知することが出来れば、どれ程楽だろうな。残念ながら私にそんな力は無いよ。まあ、或いは彼ならばそれを出来るのかもしれんが。
ともかく、かつて、私は私の人生を生きた。その中で卿とも出会い、そして、このように話をした。卿は忘れているようだが、私は覚えている。
無論それは過去ではない。この日このとき、この空間での話だ。私はそれを覚えているのだよ」

蓮の反応に対して羨むように、しかし同時に落胆したかのようにラインハルトは落胆する。

「卿にとって今とは、今この瞬間だけなのだな。幸せなことだ。妬ましいほどに」

「何が言いたい……?」

「確認しておきたかった。卿が何者であるかを。カールもナウヨックスも何も言わんからな」

「カール……」

そいつは誰だ、と蓮は疑問を浮かべる。ラインハルトは別段隠すことも無いとその正体を言う。

「カール・クラフト。私と知り合ったときは、そう名乗っていた男だよ。卓越した異常者だ。千単位で名を持っているらしいがな。例えばファウスト、サン・ジェルマン、パラケルスス、カリオストロ、そしてメルクリウス…この名が一番通りがよいか。もっともナウヨックス曰く、これだけの名を使っているのは彼が純粋ゆえにらしい」

蓮は名前の一つに引っかかりを覚える。カリオストロ、その名を蓮は聞いたことがあった。

「……信じているのか、それを」

「どちらでもない。どちらでもよい。そんなことは重要ではない。ただ、彼には力があり、面白い男で、私と目的が合致している。ならば何一つ問題はあるまい」

「目的?」

「カールが言うには私は生まれる世界を間違えたらしい。難易度が低すぎる。取るに足らぬ。だが生まれた以上は生きていくしか他に無く、私なりの順応法……知らずのうちに纏っていた不感という名の甲冑を、カールは容赦なく剥ぎ取ったのだよ。
故に既知感だ。私は何をしてもつまらないという気持ちを、無限に味あわされている。ある意味、彼は仇だな。私を壊した。人であろうとした私を」

蓮にはそれがどれだけ意味するのか分からない。しかし彼にとってそれは認められないことなのだろう。だから、そう言わずにはいられなかった。

「……満足したい、だけだと?」

「他に何があるのかね。ここは私の世界ではない。ゆえに私が在るべき世界を(・・・・・・・・・)創造して流れ出させる(・・・・・・・・・・)。踏破するに足る山を出現させて乗り越える
それが旧秩序(きちかん)の終焉だ。我らは牢獄
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