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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第六話 宣戦布告 好きなケーキはリンツァートルテ
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―――黒円卓―――

「座って、しばしお待ちなさい。だが、副首領閣下の席だけはやめた方がいい。そこはハイドリヒ卿と近すぎる。(ゼクス)(ズィーベン)、その当たりが良いでしょう。対面ですし、あながちあなたと無関係でもない席だ」

クリストフが蓮にそう忠告し、扉を閉める。緊張の面持ちで蓮は前に進む。

「しかし、円卓か……」

漆黒の大円卓を眺めながら蓮はそう呟く。闘技場や劇場を思わせるすり鉢状の空間で、そこにあたる平地にはそれが設置されている。加えて、円卓を取り囲む席は十三。平等を取り計らう為の席で唯一違和感を感じる部分があるとするならラインハルトが座るのであろう席、そしてその後ろ。
刻まれた印は変形したNかHの文字、だがそれが意味するところを蓮は理解は出来ないが不吉なものと感じることは出来る。例えるなら外人が“殺”や“滅”の字をみて愛や平和とは思わないのと同じような感覚、それだけ量が違うと言うことなのだろう。
そしてその後ろ、感じる表現をもっとも近い形で表すなら疎外感。そこだけがはっきりと他の席と違う。違和感、本来なら同類であろう存在の中で違和感しか認識出来ない。どの席にも個性はあるがあくまでも彼らの範疇を超えない。ラインハルトの席とて同じこと圧倒的なまでに量が違うだけで質は変わらない。
だが、ラインハルトの後ろ、そこに席は無いが質が違う。周りを光とするならそこだけが闇となっている。

「掛けたまえよ、そう警戒せずともよい。聖餐杯に何やら脅されたのだろうが、私も礼は重んじる。ここの主人として、客への対応くらいは弁えているつもりだよ。もっともナウヨックスが居ないのでね、茶の一つを出すことも出来ないが、まあそこは許したまえ」

蓮に席に掛けるように促し、蓮の目の前にある六番の席を目でラインハルトは指し示す。しかし、蓮はせめてもの抵抗とばかりにラインハルトに逆らって七番の席に座る。

「ふふ、なるほど。なかなか面白い選択だ。象徴的とでも言うかな。卿、そこが誰の席か知っているかね?」

「別に……」

蓮はそっけなく返答する。しかし、彼の瞳には闘志が宿っている。マリィを取り戻す。そんな信念が見え隠れしラインハルトにむしろ挑むような目線を向けていた。

「あんたは何のために俺を生かしたんだ」

「フム、私は唯卿と話したかったんのだよ」

「な……」

「ツァラトゥストラ。たとえば卿は、今と同じ状況を以前にもあったと、感じたことはあるまいか。言うなれば既知だよ」

「それがいったい……どうしたってんだ……?」

「たとえば私は…この瞬間、卿と対峙するこの空間、空気に、覚えがある。かつて私は卿に同様のことを説いた。それを覚えているのだ、思い出さないかね?」

「人違いだろ……」

精一杯の表情
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