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KANON 終わらない悪夢
37美汐、ゆうくん
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 天野美汐さんがデレた。
 もちろん普通のデレ方では無く病んだデレ方で、佐祐理お姉ちゃんのような目の下に力が入りまくった感じで、笑顔なのだが祐一しか見ていない見開いた目をして、以前の光彩に光がないレイプ目から、背景も他の人物も目に入らない鈍い光を放つ狂った眼光に進化した。
 まばたきもしないので目が乾くのか、眼球を濡らすために涙が勝手に流れてくるようで、見慣れるまで怖い。
 現在の美汐さんは、死に別れたと思っていた妖狐の少年が祐一の使い魔だと知らされ、もう二度と離れ離れにならないよう魔物の腕力で祐一を拘束し、何かハーーハーー言いながら病んだ目で見下ろし、エンドロフィンの欠乏状態なのか震えていて、足まで使って絡みついて相手を逃がさないようにしていた。
 妖狐の一族の各家は、天使の人形の計画に驚き、人身御供や嫁となる男女を差し出し災厄を防ごうとしていたが、まあ名雪ちゃんが「だいじょうぶですよ」と言っていて、見つけ次第フルパワーでぶん殴ったり、たくあんアタックなどで始末すれば済むので水瀬家の面々は安心していた。

 第三十七話。
「あの、お婆さん? 実は7年前の記憶が無いんで分からないんですけど、俺は天野の家にいたんですか? 親類の家か実家にいたと思うんですけど」
 せっかく喜んでいる美汐を落胆させるのは気が引けたが、人違いでぬか喜びさせるのも悪いと思い、お婆さんに聞いてみた。
「うむ、あれは確かに7年前じゃった、森の奥で大きな泣き声が聞こえてのう、もちろん人には聞こえん声じゃ、わしらも慌てて駆けつけたが、その頃には狐様が来られて、その子と怪我をした人の子を助けて帰られた後じゃった」
 もちろん、狐様とは秋子ちゃんの事で、泣き声の主が祐一、怪我をしたのがあゆだった。
「そこに小さな子が走って来て、「助けて、助けて」と言うたで、その子に付いて行ったが、もう怪我をした子供はおらんかった。それでわしらも「その子は狐様が助けたので安心せい」と言うたら気が抜けたのか、そのまま倒れてしもうてのう」
 あの現場には、あゆと祐一しかいなかったが、それ以外の子供とは?
「心の声で話す子じゃったで、これは丘から来た子かも知れんと思うて、とりあえずうちに連れて帰ったが、今にして思えば、あれは婿殿が助けを呼びに行かせた、もう一人の婿殿じゃったんだのう」
「はぁ?」
 また祐一が理解不能の話をする人物が一人増えた。
「うむ、怪我をした友達の傍を離れられん体と、誰か助けを呼びに行きたい心。あの時、婿殿は力を使こうて、もう一人の自分を作って送り出したんじゃ」
「へえ?」
「わしらの間ではようある話じゃ、うちの息子、美汐の父親も時々分身を作っておった。この子が熱を出した時などは、一人残って手かざしをして治してやっていたものじゃ」
「はあ……」
 まだまだ理
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