37美汐、ゆうくん
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同じで「屋上か窓から飛び降りるかも知れないわよっ」と言われるかも知れない。祐一は慎重に言葉を選んだ。
「私なんか忘れちゃった? 私は7年間、ずっと、ずっと待ってたのにっ」
「ごめんな、俺、お前の事忘れてて、でも、本当に何も覚えてないんだ」
「いいよ、いいよっ、でもっ、今日だけは私、ゆうくんのおよめさんだよっ」
「ああ……」
思考を制御できない祐一は、美汐の前で嘘をついても、全て心の声で分かってしまう。
しかし今は、恐ろしい香里や、あざとさや嘘やマッスルボディを見て恋愛感情が薄れてしまった栞より、目の前で泣いている少女がとても愛おしく思えた。
「これからでいいな、また何か思い出すかも知れないし、これからやり直しでいいな?」
「うん……」
祐一の心に嘘が無いのを知ると、目を閉じて精一杯背伸びする美汐。しばらくすると、硬直していた筋肉から力が抜け、あれだけ震えていた体が収まった。
「あの頃、お婆ちゃんには怒られてたけど、キスなんて毎日してたのに、今はこんなにドキドキしてる」
「もう子供じゃないからな。でもいいのか? 俺みたいな「三叉鬼畜最低男」でも」
様々な事情があったと言え、栞、真琴に続いて、名雪、香里、月宮真琴他三名、舞、佐祐理、秋子まで頂いてしまい、正にあだ名の通り「鬼畜」としか表現のしようが無い祐一の下半身。
「それは…… みんな、ゆうくんの力が欲しいからよ。きっと美坂さんは自分が無くした力を補充できる相手を見付けて、自分から近寄って行ったの。お姉さんだって一緒よ」
それ以前は祐一に見向きもしなかった香里も、妹を救った相手だと知った途端、恋心を芽生えさせ、命の危険を知ってからは、まるで充電器のように傍に置き、離そうとはしなかった。
「確かに、そんな感じだったな」
「でも、真琴って人魚姫のお話みたいに、ゆうくんに愛されなかったら泡になって消えてしまうの。自分から告白しても同じ、今みたいに、ゆうくんに意地悪したり、嫌われるような事しかできないの。それを知ってても、真琴はゆうくんに逢いに来た」
「あいつが?」
真琴に限って、そんなはずは無いと思うが、嘘などつきそうに無い美汐の言葉には黄金の重みがあった。
「私って嫌な女でしょ、真琴はあんなに純粋に、ゆうくんの事だけを思ってるのに取り上げようとしてる。他の人だって、私と同じように切ない気持ちで待ってるのに、こんな言い方して」
「もういい」
泣き出した美汐を抱き締めて、頭を撫でてやる。
「寒いだろ、風呂に入ろう」
「うん」
洗い場に入ると、美汐は当然のようにこう言った。
「また私が洗ってあげる」
「へ?」
「だって、いつもそうだったじゃやない」
有無を言わさず座らされ、手慣れた作業のように決まった手順をこなして行く美汐。まず後ろから祐一の顎
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