37美汐、ゆうくん
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っておるのではありませぬ。美汐の、孫の今までの辛い思いを察してやって下されっ」
もう床に額をこすり付けるように頭を下げるお婆さん。美汐が言っていた通り、霊力が強い子供を欲しがる家はあるらしいが、そうまでされて断れる祐一ではなかった。
「あの、手を上げて下さい。天野、いえ、お孫さんが嫌いなわけじゃありません、まだ子供までは早いかなと」
その時、香里の鬼のような顔を思い出してしまったが、他にも祐一を取り上げようとする泥棒猫は許さない舞おねえちゃんとか、この場にいない栞さんとか、美汐との関係を認めてくれそうにない相手が沢山いた。
「では、あの美坂のような、とうに血脈の絶えた家の娘達には情けをかけて下さっても、この子にはっ」
(ばれテ〜ラッ)
美坂家の姉妹丼をご馳走になって沢山種付けしたのは、妖狐の世界ではバレバレらしい。
「祝言まで挙げた美汐には、子を産ませて下さらぬと申されるかっ」
「へっ……?」
「ゆうくん、覚えてない? 私達、結婚したんだよ」
別れが近付いた頃、悲しむ美汐のために、お婆さんが自分の花嫁衣裳を着せてやり、仮祝言まで挙げていたらしい。
「その妖狐の娘さんも、帰って来れたのは婿殿の力。それに先程は秋子様とも睦み合われたご様子、街中に秋子様がお悦びになる声が聞こえましたぞ」
「まっ、参りました」
さらに秋子ちゃんとの関係まで、全部ばれていたらしい、それも街中に。
「ゆうくんの浮気者っ、どうせ7年前の約束なんて覚えてないんでしょ」
ちょっと頬を膨らませて怒る美汐。最初は「栞との約束が先で、婚姻届では香里が先」などと言い訳しようとしたが、現時点での先約と結婚歴のタイトルホルダーは美汐だった。
「すまんっ、多分、別の俺だから、記憶は無いみたいだ、それにあの頃の事は殆ど覚えてなくて」
「うん、いいよっ、昔みたいに何でも教えてあげるっ」
ほんの数分前とは完全に別人になって、病んだ笑顔で優しく微笑んでいる美汐さん。 もう「みーちゃんの恥ずかしい所」でも何でも教えてくれちゃうらしい。
「お婆ちゃん、秘薬はある?」
「おお、持っておるぞ、婿殿には頑張ってもらわねば」
そう言って何か瓶に入った黒い丸薬を瓶ごと渡したお婆さん、一回一錠の所を美汐は三錠出して祐一に渡した。
「飲んで」
「エ?」
正露丸のような怪しい丸薬を見て後ずさるが、秋子も止めようともしないで「後で私にもして下さいね」みたいな表情で見て顔を赤らめていた。
『飲んで』
強く命令されたので口に運んだが、朝にペットボトルに混ぜて飲まされた無味無臭の一服盛るための強壮剤ではなく、もうその為だけに作られた薬の強烈な味と臭気にむせたが、水も飲まされて胃袋に流し込まれた。
「スゲエッ、ゲホッゲホッ」
大脱走で密造の蒸留酒を飲まされるシー
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