本能寺 かく炎上せり
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投降しろ」
「エ!?エ!?」
「お前だけなら、処分されることはない。…俺と一緒に死ぬことはないんだ」
弥助は暫くあの丸く巨大な眼球で、はったと俺を見据えた。そしてぐい、ぐいと猪首を大きく振った。
「俺ガイナイト、信長死ンジャウネー」
「いや同じなんだよ!お前が居ても居なくても俺は今日死ぬの!!だから無駄な人死に増やすのも阿呆らしかろう!!」
冗談じゃないぞ、なに忠義を尽くそうとしてんだよ。お前の忠義のせいで俺の死がちょっと面白くなっちゃうだろ!?
「俺ノジイサン、村デ一番ノ呪術師ダッタヨ。俺、呪イ出来ル」
…呪い、だと?既に寺は炎に包まれているというのに、呑気に呪い?
「…呪いってこう…なんか時間を掛けて祈祷やら何やらする印象なんだが、お前の里では即効性のやつがあるのか?」
それは呪いじゃなくて魔術とか妖術と呼ばれるものだろう。
「効クヨ、何シロ爺サン特製ノ呪イダカラ。早速ダケド準備スルヨ」
弥助は裃を脱ぎ捨てると、その逞し過ぎていっそ獣っぽい上半身を晒した。
「何故脱ぐ!?」
「『オグン』ノ神ヲ降ロスヨ」
「え、何それ、オグンて何!?」
「炎ノ神ヨ!加護ヲ頼ムノヨ!」
「ってお前、主に炎の件で困ってるのに更に炎の神降ろしてどうするんだよ!」
「仕方ナイネ、『オグン』ハ戦イノ神デモアルカラネ」
「厭な兼業してんなぁ!!」
…しかし、好相性な兼業ではある。
戦に炎が絡むと文字通り『殲滅戦』になる。俺は今に至るまで、何度も『焼き討ち』という殲滅戦で政敵を蹂躙してきた。だがそれはあくまで敵陣でのことであり…いやいやいや、俺が炎に巻かれているこの状況で炎の神に何を頼めと!?
「おい、やっぱやめろ。俺が見事な消し炭になる未来しか見えん」
「シッ、ウルサイヨ。オグン降リテキテル!モウ降リル!」
弥助は八つ手のような両掌を高々とかざし、パァン、パァアアン!!と打ち鳴らし、息を大きく吸い込んだ。
「ニャンポポポォ―――――ン!!!」
にゃっ……!!??
俺は窓際に駆け寄り、寺を取り囲んでいる連中のようすを伺った。
『にゃん…?』
『な、何か変な声が聞こえなかったか…?』
『どうなってる!?中はどうなってんだ!?』
―――ほらみろ!!もう面白いことになり始めてんじゃねぇか!!!
「やめろ弥助。俺はもういい、その呪い…とやらが日本で効くとは限らんわけでな」
「イヤイヤイヤ、モウ降リテキテル。俺ニハ見エルヨ…ニャンポポポォ―――ン!!」
パァァアン、と両掌を打ち鳴らす音がもう一つ響いた。敵陣のどよめきは、俺にも嫌というほど伝わってくる。あいつらも明らかに、ニャンポポポンに戸惑っている。
…やばいぞ、俺の最期を彩る声がニャンポポポンはまずい。織田信長は炎に巻かれて気が触れた
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