36美汐の初体験
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かじめ料を稼いでいた天使の人形、精神年齢十歳の割には結構できる男になっていた。
「へへ〜、旦那様、何でもお申し付け下さいませ」
すっかりしおらしくなって、手を付いて頭を下げる栞。天使の人形は教科書に載っている魯迅の小説を思い出し、気概天を突くかと思われた栞にも、小作人根性が染み付いているのを悟って悲しくなった。
天野本家。
爺やは天野家術者の知り合いの伝手を辿り、ビデオなどの証拠物件を持って非公式な会合に来た。まだ活動している倉田の分家も参加、他家の分家からも古老が集まった。
こちらにいた月宮関係者は全滅に近かったが、老人の生き残りは会合に参加できた。
「以上が私が水瀬本家で見て来た現状です。純血の妖狐が秋子様、名雪様、沢渡真琴様、相沢祐一様の四柱。精霊化し不死の体を与えられたのが、美坂家の栞様、香里様、天野家の美汐様、我が家の佐祐理様で、川澄舞も同様と思われます。他には月宮真琴以下三名にも巫女としての資格が与えられた模様です。この皆様が岩戸の向こうの神域に篭もられ、ものみの丘が方舟となった時、この世に神罰が与えられ、終りが来るものと思われます」
天使の人形と名乗る、相沢様の使い魔が災厄を起こし、月宮あゆと一弥を復活させようとしているのが伝えられ。一弥も魔物と化しているが、現状では天使の人形と連絡、交渉できるのは一弥か栞だけで、秋子ですら止められない状況が公表された。
「誰が月宮あゆを殺したか、下手人を差し出さねばなるまい」
「おりもせぬ下手人を探し出し、差し出せと言うか?」
「左様、そうせねばお怒りは収まらず、この世は終わる」
それは誰なのか、森の管理者なのか、造園業者なのか市町村の責任者なのか、とりあえず全員を捕らえて首を差し出して、その場で処刑されても構わないので集められる手筈が整えられた。
「しかし、倉田から三人、月宮からは蘇る主神と巫女四人、上手くやったな、うちからは一人か」
「悪い冗談だ、それ以上言うな。それにあのおかしな教団を月宮に数えんでくれ」
「まあまあ、考えるにあれが一番正しいのかも知れませんな、巫女や人身御供をできるだけ差し出して、シェルターでも作って生き残れる人数を増やす、皆さんそうなされ」
そこで会合に出ている一同も、爺やが水をガバガバと飲み、話し合いの始めから見ても、若返っているのに気付いた。
「おぬし、皺が減っておるぞ、皮のたるみも」
「ああ、一弥様に何か術を掛けられたようでしてな、血圧や腰を治してくださるそうですが「もう少し地獄を見てから死ね」とのお達しです」
目の具合からは、傀儡になっていないのは見て取れたが、災厄の妖狐の側に筒抜けになるのは避けたい一同。
「倉田の、次の当主会合には出席を見合わせてくれんか、すまんの」
「いやいや、気になさらず、それと一弥様は当主様
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