36美汐の初体験
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のか、美汐も疑問符を浮かべていたが、次第に雰囲気が怪しくなって来て、その首がギギギギギと音を立てて祐一の方向を向いた時には、光彩に光がないレイプ目だった目に怪しい光が宿り、佐祐理ぐらい病んだ目に変貌していた。
『婿殿を見て気付かなんだか? 声も、匂いも? そうか、あの頃は心の声は聞こえんかったの、見かけは少々違うが、この子は7年前、お前と一緒になった妖狐の子じゃ』
その時、美汐が取った行動とは?
ガシャーンッ!
まず、手に持っていたお盆と湯飲みを力無く落とす。
「ゆうくん……」
「は?」
その瞳には、次第に大粒の涙が盛り上がって来て、視線は祐一にロックオンしたまま、信じられないと言いたげに口を押さえ、首を左右に振る。
「ゆ〜〜〜く〜〜〜〜〜んっ!!」
祐一にはその動きが分解写真のように見えていたが、普通人なら、ほぼ瞬間移動にしか見えないスピードでダッシュして来た美汐は、足元も見ないで、熱いお茶や陶器の破片も気にせず、一直線に祐一の胸に飛び込んだ。
「会いたかったっ、ずっと会いたかったのっ! うわあああ〜〜〜っ!!」
その勢いで後ろに押し倒されたが、後頭部は美汐の両腕に守られ、魔物の腕力でガッチリと抑えられ、逃げることも動くことも出来ない状態で拘束された。
もちろんその間、祖母、秋子、真琴、などのギャラリーは、完全にアウトオブ眼中で泣き叫ぶ。
(ゆう君って何だ? もしかして俺の事か?)
「何してんのよ美汐っ、祐一はアタシのなんだからねっ、ちょっとぉ」
「うあああっ! あああ〜〜〜〜〜っ!!」
同じ7年でも、捨てられたと思って恨んで過ごした7年と、生木を裂くように引き裂かれ、相手が死んだと思い、どんどん思い出が純化されて来た7年では、天と地ほどの開きがあった。
「良かった、良かったのう美汐」
年を取って涙もろくなっただけでなく、可愛い孫が喜ぶ姿を見て貰い泣きするお婆さん。
今までこの話を公表するのは禁止されていたが、美汐が祐一の意思で嫁入りして、夜伽を済ませた時点で解禁となった。
「ゆうくんっ、ゆうく〜〜ん!」
それからしばらく、話もできなかった美汐だが、お婆さんからも祐一が消えないと言い聞かされると、次第に落ち着きを取り戻した。
「ほんとっ? もうどこにも、グスッ、行ったりしない? うっ、私の前から、消えたりしない?」
「ああ、学校とかは行くけど、消えたりなんかしない、安心しろよ」
「嫌っ、ずっとここにいてっ」
「無茶言うなよ、おい、そんなにくっついたら、胸が」
「ゆうくんは嫌? 昔はずっとこうだったじゃない、それに私の事はまた「みーちゃん」って呼んで」
ずっと敬語でガチガチの喋り方をしていた美汐は、いきなりタメ口、それも「ゆうくん、みーちゃん」の間柄になってしまった。
「…
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