【止まり木にまどろむ二羽の小鳥】
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でっ」
「え…ッ」
「お話は終わりです。さぁ……眠って下さい、ネジ兄さん。私が傍に付いてますから」
「ヒ、ヒナタ様に見られていると落ち着きませんから、付いていなくとも───」
「じゃあ、こうしましょうか」
「!」
ヒナタはネジの額の中心を人差し指で軽く触れ、脳神経の極一部を眠らせる刺激をほんの少し与えると、ネジの目は眠たげにとろんとして、おもむろに瞼を閉じ深い眠りに落ちてゆく。
(普段のネジ兄さんには効かないだろうけど、具合が悪くて弱ってるせいか、私でも眠らせられたみたい……。お休みなさい、ネジ兄さん。ゆっくり寝てね)
───どれくらい時が経ったろう。ヒナタはネジの穏やかで美しい寝顔を独り占めしていた。
……しかしふと、前髪に紛れた額の呪印に目が止まる。
(いつも、包帯か額当てに隠れてる、日向の呪印)
ヒナタはそっと、中指と人差し指でその額に触れる。
(これさえ、無ければ……私の方が分家だったなら、ネジ兄さんのお父上は───)
「とう…さま……」
「!?」
その微かに開かれた口元から漏れ出た声は、いつもの従兄の声より上擦って聴こえた。
「とうさま、いかないで……。おいて、いかないで……」
(ネジ、兄さ───)
「ひとりは、いやだ……さみしい、よ。とう、さま・・・──」
瞳をぎゅっと閉ざして苦悶の表情をうかべ、ネジの震える片手が虚空へと伸ばされ、ヒナタはその手を両の手で掴まずにはいられなかった。
(ごめんなさい……ごめんなさい、ネジ兄さん...! 私はあなたから、大切なお父上を───)
『父は……自らの自由な心で、里の仲間や家族の為に命を賭した。だから、あなたのせいじゃない。──もう謝らないで下さい』
ヒナタは、ハッとして思い出す。
(これまであなたに数々の無礼を働いてしまったと、ネジ兄さんが謝罪して来た時私は……兄さんは何も悪くありません、ネジ兄さんを苦しめたのは全部私のせいだからと……私は何度も、何度も頭を下げた。その時に…、ネジ兄さんが言ってくれたのが、さっきの言葉だった。
“もう謝らないで下さい”と言った時、本当は私に笑いかけようとしてくれていた。
でもうまく表情に出来なかったみたいで、すぐ恥ずかしそうに顔を背けてしまったけれど)
ヒナタに片手を両の手で包まれたネジは、先ほどの苦悶の表情は和らいで、静かに穏やかな寝息に戻っていた。
(───そしてネジ兄さん、あなたはあの事件が起こる前、弱音を吐いていた私にこう言ってくれたよね)
『大丈夫です、ヒナタ様。私があなたを強くします。そして、命をかけてあなたを守りますから』
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