第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#46
FAREWELL CAUSATIONY〜Hold Me In The Stormy〜
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【1】
静寂の中を翔ける流星。
裡に、一人の少女を抱きながら。
冷たい風、寂びた空気。
その姿、嘗てドス汚れた悪意に敢然と立ち向かった、
哀しみの魔人にも似たりか。
ならば、オワリ無き道を駆け落ちた二人のように――
このまま、何処かに逃げてしまおうか?
宿命も使命もない場所まで、スベテを棄てて、何もかも置き去りにして。
解ってる、赦されない。
そんなコト、絶対に赦されないし、しちゃいけない。
でも……!
「チッ! 追ってきやがった!
速度はさほどじゃねーが射程距離が拡過ぎる!
ジジイ達と合流は出来ねーな。
フツーと違ってあの 『能力』 の前じゃ
数が増えるほど却ってヤバイッ!」
あぁ、私、この人が好き――
どんな時でも諦めないから好き――
どうしようもないくらい、どうにかなってしまうくらい。
でも――!
「承……太郎……」
「喋るな、取り合えず今は休んでろ。
二人バラバラに逃げても片方が捕まりゃあ意味ねぇ。
問題はあの “霧” の射程がドコまで及んでるかだ。
上は論外として下、地下の奥深くまで浸透してくんのか?
リスクのワリに旨みが少ねーな、読み違ったら袋の鼠だ。
なら――」
珍しく口数が多い、恐らく喋りながら考えてる。
この先の逃走経路をどうすれば、二人とも生き残れるのかを。
だから、言わない方がいい。
それはただの自己満足、自分の感情を爆発させたいだけの我儘に過ぎない。
彼に、アラストールに報いるためなら、ここは抑えるべき、
言ったって何もならない、言っちゃいけない。
でも、でも、無理、だよ、承、太郎?
だって、だって……
「腕がッッッッ!!!!」
言って、しまった。
静寂の大気が、一段と重く密度を増した。
元より仕方のない事、避けては通れぬ事象だが、
失った代償が重く二人の双肩に圧し掛かった。
痛々しく喰い千切られた左腕、破れた制服が気流に靡く。
出来れば、なかったコトにして戦いに挑みたかった処。
出逢う前の二人だったなら、それも可能だったかも知れない、
でも、こうなったのが、
『自分で良かった』
“自分なら良かった”
相反する感情、相克する想い、何れをも抱いて流星は翔ける。
「私が……弱いから……あんなヤツらに、モタモタしてたから……
だから……!」
こうなるコトが解ってれば、絶対一人でなんか行かせなかった。
充分予測出来た事なのに、強力な罠や守護する徒が居ないわけないのに。
なのに、甘えてしまった、信じてしまった、
“私が迎えに来て欲しかったから……!”
「……」
告げられる言葉は、幾つも浮かんできた。
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