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KANON 終わらない悪夢
35舞と名雪
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たいにして、お姉さんを虐める道具にするとか、どうせそんなとこでしょ?」
(へへっ、バレてたか)
 そう聞かされて身を震わせる若い運転手達。昔の体が弱い一弥様ではなく、幽霊から魔物に変化した怪物を乗せているのを思い知らされた。
「じゃあ、待ってて下さいね」
 栞が走って行くと、口調を変えて話しだす一弥。
(車を出せ、早く)
「は…… はい」
 術に掛かり、車を発進させる運転手、栞を待って開いていたドアは自動的に閉まり、加速して行く。
「一弥様、栞様は追いかけて来られますよ、確か縮地使いだとか」
(そうだね、でもあの子にはこれから起こることを見せたくないんだ)
 例え倉田の家で使える全部の術者が並んでも、どんな宝具や術で攻め寄せても、巨大化してあらゆる暴力を振るって、罠に掛かって座敷牢に閉じ込められても、家ごと破壊して滅ぼそうと思っている一弥。もう心は闇に染まりきり、人間らしい感情など持ち合わせていなかった。
「お考え直しを、どうか、この爺に免じてお許し下さい」
(そのつもりだよ、でも、あいつらが許してくれないんだ。一族の恥だとか何とか、「すぐに始末しろっ」て言うクソジジイの声が聴こえるんだ、やめろって言っても穴だらけにされて、もう血は出ないけど、殺されないようにするには暴れるしか無いんだ、爺やも姉やも帰ったらすぐ逃げて)
 怯える小動物のように震える一弥だが、この先に起こる悲劇は予知しているようで、家族の諍いは殺し合いに発展すると確信していた。
「もうご帰還は取りやめにしましょう、ご希望の所までお送りします、ご入用な物があれば何でもお申し付け下さい、ご逗留先にお届けします」
(ふふっ、そうだろうね)
 諦めの言葉を漏らした時に栞が追いつき、外からドアを開けて乗りこんできた。
「やっぱり、こうなると思ってた」
(栞ちゃん、僕を見ないで、化物になって暴れる僕を見ないで欲しいんだ)
「もう見ちゃったよ、大勢の人の腸を抜いて、命を集めてる所。さっきの三人も泣いて腰抜かして、這って逃げてたよね?」
(あれぐらいじゃ済まない、あのジジイがまた汚い物でも見るような目で言うんだ、「すぐにその化け物を始末しろっ」って、だから僕は暴れる、お母さんも栞ちゃんも爺やも分からなくなって傷付けてしまう、だから来ないで)
 同類の栞にも見せられない、舞の魔物と似た化け物の姿、そうなれば見境も付かず、誰にでも牙を剥いて、棘や爪が生えた醜い腕を振るってしまう。
「だ〜め、七年も私を見守って、生かしてくれた守護天使さんにお節介の仕返しです、私が責任をもって、ちゃんと話させてあげます」
 その時はどこかの魔法少女のように「肉体言語」で会話するか、このマッスルボディにものを言わせる時だと思っている栞、一弥のように見境なく暴れるのとは違い、知らない人で憎い
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