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KANON 終わらない悪夢
35舞と名雪
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いを嗅いだ時に巨大化するようで、栞のような「いやしい系」には反応しないらしい。
「…じゃあ、行こうか」
「え? ……はい」
 舞に腕を組まれ、以前から憧れていた先輩のお誘いに気付いた名雪も即座にオッケーした。体の変なスイッチは、とっくの昔に香里にオンにされ「ねこさ〜ん」にされていて、香里との関係も切れていたので、拒否する選択肢は無かった。
「舞?」
「…佐祐理は後で」
 獲物を狩った猛禽類の表情をされたので、この後何が起こるか簡単に想像が付いたが、「夫の浮気?」程度は見逃して、一弥の方を優先した。
 この後、二階から名雪のメスの声が聞こえたが、各自聞かなかったことにして配慮したが、祐一クンだけは耳を塞いで聞かないようにしていた。

「一弥、出てらっしゃい」
「一弥様?」
 爺やも庭に面したサッシを開け、視界の端で何かがうごめいているのを感じ、遮蔽した状態から出て来た化け物が一弥の変わり果てた姿だと知って、膝を着いて泣いた。
(やあ、爺や、久しぶり)
「一弥様ぁぁ……」
(そんなに悲しまないで、人間でいた頃みたいに苦しくないんだ。病気もないし毎日が楽しくて快適だよ、ゲームするのに時間制限もないし、寝る必要だって無いんだ。まあ、夜に名雪の授業があるのが退屈だね、あゆちゃんも相棒も居眠りしたり遊んでると、うめぼしアタックか、たくわんアタックだ)
「え?」
 ただ魔物として人の命を狩って生きて来たと思われた弟も、名雪によって何らかの教育を受けているらしい。
 一弥の怯え方から見ても、一緒に存在できないのではなく、教師や保護者として怖くて一緒にいられないのだと思えた。
(魔物に高等数学なんか必要ないのにな、微分積分ってなんだよっ)
 吐き捨てるように言ったが、お化けや妖怪じゃない魔物には、試験も学校もあるらしい。佐祐理はほんの少し微笑ましく思った。
「左様でしたか、一弥様はそんな所までお勉強をなさっているのですか、喜ばしい限りです」
(ふんっ、朝練だか何だか、魔物が弱る朝にランニングとか、名雪のやることはどっかおかしいんだよっ)
 名雪の日課には魔物たちへの六時間の授業と、体育か部活があるらしく、睡眠時間の長さの秘密はこの辺りにあった。
「若い頃の苦労は、何も無駄になりません、何でもお試しになって下さい、運動でも武道でも、どんな事でも」
 それが魔物としての生活や、人間を捕食するのも含まれるのか、爺やは何事にも寛容に言った。
「一弥、お願いだから、家に帰って来て」
(嫌だよ、また虐待かネグレクトでもしたいんだろ? もう分かってるんだよ)
「もうそんな事しない、だから……」
(ふざけんなっ、婆ちゃんが死んだのも全部僕のせいにしやがって)
 一弥の祖母が孫の生存を願った後、命を失ったのも、一弥が僅かに命を延ばしたの
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