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KANON 終わらない悪夢
35舞と名雪
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のジュースも一生飲めない。
「世間だとね、私と同じ年の女の子がニ時間ぐらい一万五千円で買えるんだよ? その間、何してもいいんだ。景気が悪いからブスでスタイル悪いともっと安い子もいるし、中学生なら一万円以下、ホテル代出せないから路上とかカラオケ屋さん。今の高校でもお小遣い稼ぎに援交してる子も結構いるよ?」
 泣いている子供の耳にボソボソと語りかけ、世間の闇の部分をさらに教えてやる栞。
(もうやめて〜、栞ちゃんはそんな子じゃないだろ〜?)
「ん〜ん、そうだなあ? 一時間三万円ぐらいくれたら、一弥くんとならイイヨ」
 ちょっと片肌脱いでチラ見せでサービスしてやるが、一弥の泣き声はもっと強まった。
(やだ〜〜っ、そんなの栞ちゃんじゃない〜〜っ!)
 奥さんや母親にまでと思っていた子に、三万円あれば援交でもできると誘われて、政治家の家系の遺伝子が目覚め、政治改革が必要だと思い立たせた。
「こんな大きねお部屋だと、一ヶ月の家賃十万円ぐらいするよね? ね〜、一弥くんの愛人に雇ってよ〜、月十万でいいからさ〜〜」
(やだ〜、グスッ、もうやだ〜〜、ヒック、お母〜さ〜ん)

(勝った……)
 ブルジョアどもにプロレタリアートの蟹工船な現実を知らせ、先ほどの屈辱を弟の方にぶつけて完全勝利した栞。
 七歳か八歳ぐらいで成長が止まっている子には大人気なかったが、お母さんに抱き着いて泣く所まで追い込んでやったのには満足した。

 あゆちゃんのゆめのなか。
 その日、一弥からの鬼電で、何か泣きながら世界の貧困の酷さや、栞の貧乏さを語られ、迷惑していた天使の人形。
(だって、栞ちゃんがお金で体売ったりしたら嫌だろ? だから何とかしてよっ、僕も三万円で援交しようって誘われちゃったんだよ〜〜、うええええ〜〜〜〜〜ん)
(分かった、分かったから落ち着け、金策は僕がしておくから、栞ちゃんも美汐ちゃんも、援交しないで済むようにするから、泣き止め)
(食後の薬三食分、28日分を84日に伸ばして飲むんだぞっ? 僕達が付いてたのにっ、お金のことまで気が回らなかったからっ)
(ああ、そうだな、あの家にはお金がいるんだった、どうにかするよ)
 いじめっ子のエリートのパパが、愛人との手切れ金に振り込んだはずの一千万円とか、校長先生が先物取り引きに(故意に)引っ掛けられ、税金の控除のために何度も建てていた家を売らせた金も着服し、活動資金に充てていたが、それらを栞や美汐、貧乏な娘にも配当しようと考えた天使の人形だった。
(もうやだ〜〜、貧乏はやだ〜〜っ)
(分かった、分かったから泣き止め)
 迷惑な鬼電は、栞に現金を握らせるまで続いた。
 その電話先を爺やが見付け、天使の人形の居所が発覚した。

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