35舞と名雪
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食べさせてね」
(分かったよ、口がいやしい相棒。メイドとかより、奥さんに欲しいぐらいだ)
「うふふっ」
拳を付き合わせて笑う二人、倉田本家はこうして陥落した。
「貴方の部屋はね、あの頃のままで置いてあるの、さあ、見て」
ここも「家族が泣く部屋」として保存されていたが、母か爺やぐらいしか需要も無く、祖父には早く部屋を空けるように言い渡されていた場所。
色褪せたカレンダーは当時の時間で止まっていて、使われなかったランドセルも勉強机も、小さなベッドもそのままになっていた。
「確か同じぐらいの歳だから、小学校で会ってたんじゃない?」
(いいや、学校には結局行けなかったんだ、去年の君と同じさ)
「そうだったの、ごめんね、でもあんな所、行っても虐められるだけだから、行かないほうが良かったよ」
(うん、そうだね)
古いゲーム機、古いカード、古いオモチャ、紙製品は古すぎて崩れ始めていたので、ガラスの中に入れられていた。
(へへっ、懐かしいな、でも今はプレステ2だし、あゆちゃんや相棒とも対戦できるんだ。新入りの真琴は駄目だったけど、当時は父さんも「こんな子供の遊びはできない」って、秘書や政治学の女のセンセイと遊んでたよ)
実の息子との遊びも放棄して、女の秘書や先生と夜のお遊びを楽しんでいたマスヲさん。
当主も娘には「男の甲斐性」と言う男尊女卑の家。そこでも役立たずの一弥はゴミのように扱われた。
丘の妖狐から鼻も引っ掛けられずに、強い子を産めなかった歴代当主は自分の愚かさを棚に上げ、丘への貢物を切って幸運の逆を授かっていた。
「お父さんもか、お金持ちって色々大変なんだね、うちは貧乏だからお父さんとは仲いいよ」
母と姉とは険悪なのは隠すが、それでも佐祐理と一弥のような骨肉の争いではないので、意地悪な姉もまだマシな部類だと思えた。
(うちは呪われた一族だよ、丘に登ってお嫁さんを下さいって言わないと家が絶えるのに、偉そうにしてエサ撒いて「さっさと家に来て子供産め、畜生どもっ、俺様の相手をするのはどいつだっ?」ってやらかしたからほんとに家が絶えた。レズの姉に病弱ですぐに死ぬ弟、母さんも近代教育だの女性の権利だの言って、タクシーで丘に登って香水着けてハイヒールで歩き回ったそうだよ、全員ドン引きでヒール折られて追い返されたそうじゃん)
「ごめんなさい、こんな事になるなんて思わなくて」
(お姉ちゃんの子に生まれて来るより、栞ちゃんの子供に産まれたいな。間違ったことしてぶん殴られても、それは正しいし、僕の教育のためにしてくれることだろ)
「う〜ん、無理じゃないけど、うちだと貧乏だよ? 病院にも行けないし、節約するのにね、三食後の薬があるのを二食しか食べないから、残ったのを飲み継いで予約日には行かないで、二週間先に伸ばすんだよ、瀕死の
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