35舞と名雪
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、言葉に詰まった当主。それは立場上そう言うしか無かったのか、既に手勢も少ない倉田家では言えなかったのか、及び腰で叫んだ。
(へっ、そう言うと思ったよ、さあ、皆殺しパーティーだ、爺やは逃げろ、母さん、お別れだよ)
「一弥っ」
(クオオオオオッ!)
もう母も殺すつもりなのか、別れの言葉を告げると、獣の咆哮を上げて力を開放しようとする一弥。
議員の家で拳銃は持てないのか、テイザーと呼ばれる電極を発射するスタンガンを構えた警備員や黒服が少数並んでいた。
「フンッ!」
秘書や警備員の間を駆け抜け、栞が家の中の当主に八極拳を叩き込んで吹き飛ばし、壁に貼り付けておいて震脚を踏みながら打掌を打ち込んで肋骨を砕いた。
「ぐほおっ!」
「お義父さんっ、何者だっ、お前はっ?」
「マスヲさんは黙ってろ」
一弥の父で普通の人間の婿養子議員は、栞の掌が回転するのと同じように一回転して叩きのめされた。
テイザーも打ち込まれたが、そんな物が当たるはずもなく、歯向かった者は倒され、沈黙させられた。
「は〜い、私はさっき、月宮の術者とか兵隊さんを全員ブチのめした子供です、まだ私に逆らう人は手を上げて下さい、あの世に送ってあげます」
この家にも速報が入り、二百人近くいた月宮の別働隊が全滅させられたのを聞いていた。それはオカッパの化け物で、目の前の少女と特徴が一致していた。
「「美坂、栞……」」
「あら、ごめんなさい、初めておじゃまする家に土足で上がっちゃいました」
当主の老人を叩きのめし、議員を投げ飛ばした時点で失礼極まりないが、笑って一弥の側に戻る栞。
「ああっ、一弥、ごめんなさい。お父様はああ言うしか無かったのよっ」
(ははっ、はっ、あははははははははははっ!)
駆け寄った母に抱き締められ、その皮膚や服を焦がしながら笑い出す一弥。
栞の手際の速さと、こうすれば母親を殺さずとも会話できるのに気付き、自分の頭にも血が登りすぎ、争うことしか考えていなかったのに気付かされる。
(こんな、こんな簡単なことだったなんて、はははっ)
母と手を取りあい、話し合うのがここまで簡単なのだと思い知って笑い続ける。
死ぬ間際まで自分を追い出そうとしていた祖父の声を聞き、それを戦いのゴングとして復讐することだけを夢見ていた少年は、怯えて震え、いつでも逃げられるように準備していた惨めな年寄りを嘲笑った。
(栞ちゃん、ありがとう、もういいよ)
「うん、もうあの人は…… 一週間ぐらい喋れないと思う」
(すげぇ)
天使の人形のアシストは無かったが、即死しないように、肋や骨をへし折って呼吸も苦しくして、半死半生にして偉そうな物言いが出来ないように処置しておいた。
「もしかしたら、もう寝たきりかもね。さあ、もうこの家は一弥くんのだよ。あ、またご馳走
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